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事業承継型M&Aとは?事業の承継にM&Aを利用するメリットとデメリット、成功のコツ


公開日:2021年3月19日  最終更新日:2022年11月22日

事業承継とは?

事業承継とは、会社を親族や従業員、他社などの後継者に引き継ぐことです。引き継ぐ内容は、例えば従業員、会社の資産、取引先、研究内容、自社技術やノウハウなど事業を構成するものすべてが含まれます。

現在、経営者の高齢化と後継者不在の問題を抱える企業が増えています。後継者には親族と親族外(従業員など)の2パターンがありますが、親族にも従業員にも承継に相応しい人材がいないケースで、長年続けてきた事業を存続させたいと考えた末、M&A(企業の合併・買収)を用いた事業承継(事業承継型M&A)を選択する企業が増加しています。

事業承継型M&Aの6つのメリット

後継者不在問題の解決策として、自社の経営に相応しいと判断した第三者に事業を譲り渡し、存続・発展させてもらおうとするのが、事業承継型M&Aです。

親族や従業員のなかから後継者を見つけられない場合、オーナー経営者は会社清算(廃業)を選択することも可能です。しかし、後述のように従業員の雇用維持や事業の継続、オーナー経営者の手元に残る資産額などを勘案すると、会社清算(廃業)を決める前に、事業承継型M&Aを検討しておくほうが合理的なケースも多くあります。 

ここでは、会社清算(廃業)や、親族・従業員から承継者を選ぼうとする場合と比較して、事業承継型M&Aのメリット6つを見て行きましょう。

【事業承継の主な手段と会社清算】

 

親族内

親族外

清算

   

従業員承継

事業承継型M&A

 

概要


親族に承継

従業員に承継

事業会社に譲渡

ファンドに譲渡

債権者に資産配分後、株主に資産を配分

経営権

移動に3~5年かかる

移動に1~2年かかる

移動は選択可能

移動に1~2年かかる

移動なし

株式の移動

相続税あり。個人保証の移動有り

一般的には移動なし。譲渡の場合は時価評価されているのでハードルが高い。個人保証は外れる

株式が買い手に移動。20%程度課税されるが、株式が現金化される。個人保証は外れる

株式が買い手に移動。20%程度課税されるが、株式が現金化される。個人保証は外れる

なし

リスク

承継者の能力やモチベーション

個人保証を引き継ぐハードル

今後の関与が難しいことも

今後の関与が難しいことも

従業員の雇用

 

1:営業権を含めた評価額で利益を得られる

承継者のいない企業がとり得る選択肢のひとつ、会社清算(廃業)は、株主は法人資産の含み益等の解散価値を手にすることができますが、M&Aによる事業承継を選択すれば企業が利益を生み出す力である「営業権」を資産価値に含めて株式を売却できる可能性があります。

つまり安定して利益を生み出している企業のオーナー経営者にとっては、会社清算は最良の手段とはいえません。

会社清算を選択するよりも、M&Aを選択したほうが、株主の手取り額を増やせる可能性が高いのです。

2:経営者の連帯保証や担保提供を外すことができる

借入金が多くある企業の場合、経営者の担保提供や連帯保証が親族や従業員への事業承継への妨げになることもあります。

M&Aを利用して第三者に事業を承継する場合、譲渡企業のオーナーの個人保証は買い手が肩代わりする条件をつけることも可能です。経営者にとっては個人保証からの解放も視野に入ります。

3:従業員の雇用を継続できる

会社清算(廃業)を選択した場合、従業員は職場を失うことになりますが、事業承継型M&Aなら従業員の雇用を維持する形で事業を譲り渡すことも可能です。

雇用の引き継ぎによって従業員の雇用を維持できることは、大きな精神的メリットだと感じるオーナー経営者も多いようです。

4:既存取引先との取引継続も可能

事業承継型M&Aで事業承継した場合でも、従来の取引先とは取引を継続できるケースが一般的です。

ただし、従来の経営者と取引先が個人的な信頼関係に基づいて取引しているような場合には、新たな経営者・オーナーを取引先に紹介する必要が出てくることもあるでしょう。

なお、M&A手法として事業譲渡を選択した場合で、取引基本契約に基づき取引しているケースでは、契約当事者が変更になるため、改めて契約を締結し直す必要があります。

5:長年育てた技術やブランドを引き継げる

長年にわたり育成してきた自社の技術やブランドも、会社清算(廃業)を選択してしまえば次代に引き継がれることなく消滅してしまいます。しかし、長年にわたって厳しい競争をくぐり抜けてきた技術やブランドが引き継がれないことは社会的な損失です。

現状で承継者候補がいない企業の経営者にとって、 愛着ある技術やブランドの価値を次代に引き継げる手段が事業承継型M&Aなのです。

6:自社の競争力を高める、最適な承継者へ引き継げる

事業承継型M&Aを利用するメリットとして、 自社の競争力をさらに引き出せる承継者を選ぶことが可能になる点も見逃せません。 

M&Aを事業承継に活用すれば、自社の持つポテンシャルを引き出すことができる人材や企業を親族や従業員以外から見つけ出して、自社の今後を託すことができるようになります。

事業承継型M&Aの落とし穴(デメリット)

これまで見てきたように事業承継型M&Aには、廃業を回避し、従業員の雇用を確保できるなど、会社清算を選択した場合と比べ多くのメリットがあります。とはいえ、事業承継型M&Aにデメリットがないわけではありません。

1:希望する条件の買い手が必ず見つかるわけではない

事業承継型M&Aも、あくまでM&A(企業の合併と買収)です。 多少不利な経営状態でも経営を引き継いでくれる可能性がある親族や従業員と異なり、自社が第三者から評価される状態であることが前提です。

特に、経営状態が悪く多額の負債を抱えている企業や、安定的に利益を出せない状態の企業であれば、「承継したい」と思う買い手が表れない可能性が高まります。また、承継を希望する買い手が表れても、売り手の希望額や希望条件とは隔たりがあるために、M&Aが成約しないケースもあります。 

会社と経営者に余力がある間に十分な準備期間を設けて自社の経営状態を把握し、問題点を洗い出して、自社の客観的な状況を前提として事業承継の際に譲れないポイントを考えておく必要があります。

2:承継させるための時間がかかる

事業承継型M&Aによる事業承継では、 買い手探し(ソーシング)や交渉に相応の時間を要するほか、M&A成立後も経営ノウハウや技術の引き継ぎのため、売り手の経営者が一定期間会社に残ることを求められるケースもあります。

3:従業員や取引先が反発する可能性も

事業承継型M&Aで事業承継すると、第三者を新たな経営者をとして受け入れられない従業員や取引先など、ステークホルダーからの反発を受け、従前の経営者が築き上げてきた企業の価値を毀損する可能性はあります。

また、承継後に従前の経営方針が変更され、待遇や取引条件の変化から従業員の離職や取引中止をまねく恐れも拭えません。

ただし、このような事態は、従業員や取引先への承継についての事情説明や、M&A前の買い手企業との交渉で一定程度予防することは可能です。

事業承継型M&Aをスムーズに進めるためのコツ

事業承継型M&Aの落とし穴(デメリット)を回避し、スムーズな承継を目指すためには事前準備が必要です。

事業承継を成功させるための2つのポイントを紹介します。

1:他の株主の所在を確認し、承継について同意を得ておく

設立から年数が経過した企業では、設立時の株主が疎遠になり、あるいは相続が発生して権利関係が複雑化していることも少なくありません。

株式の譲渡による事業承継型M&Aでは、株主の同意が得られなかったり所在不明の株主が存在すると、後に異議申し立てなどの訴訟を起こされるリスクなどがあるため、M&Aの成立自体が難しくなります。

事業承継型M&Aの前に株主の所在を確認し、必要に応じて承継の事情を説明し、理解を得ておくことが重要です。

ただし、まだ事業承継型M&Aを検討しているだけの段階で、いたずらに多くの利害関係者へ情報を開示することは避けるべきです。断片的な情報が独り歩きして利害関係者を動揺させ、事業に悪影響を与えるケースも少なくありません。 

例えば、取引先金融機関に情報が漏れれば、承継者が決まらないうちは資金の貸付を渋られることも考えられます。また、従業員に情報が漏れた場合は、雇用への不安も絡んでとりわけ大きな動揺につながってしまう可能性があります。

事業承継型M&Aについて情報を開示する前に、事前に情報を知っておくべき関係者と、事後にていねいに経緯を説明するほうがよい関係者を整理しておきましょう。 

2:事前に情報収集し、専門家にも相談する

これまで見てきたように、事業承継型M&Aは、あらかじめ準備しておくべき項目が多岐にわたるほか、思わぬ落とし穴(デメリット)も存在します。 高度な知見を持つ専門家に相談するのが、スムーズに事業承継型M&Aを進めるうえの最大のポイントといえます。

身近なところでは、商工会議所や地銀・信金などの金融機関にも相談することができるほか、独立法人中小企業基盤整備機構が運営する「事業引継ぎ支援センター」など、国が設置した窓口への相談も可能です。

また、M&Aの仲介を手掛ける民間企業も存在するほか、近時、インターネット上でM&Aの買い手企業を探せる“M&Aマッチングプラットフォーム”と呼ばれる手軽な仕組みも普及しはじめました。

有人窓口での相談はそれなりに準備が必要になるため、まずはM&Aマッチングプラットフォームに情報を登録して買い手企業の情報収集から始めるのもよいでしょう。

M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」では、プロのアドバイザーに直接相談することで、会社売却や資金調達に関する最新のトレンドや業界別のインサイトを知ることができます。まずはお気軽に無料でご相談ください。

事業承継で承継者が引き継ぐ3つの内容

事業承継は専門性が極めて高い領域ではありますが、引き継ぐ内容を把握しておけば、どのような準備が必要か明確にできます。ここでは、事業承継で引き継ぐ3つの内容をご紹介します。

知的財産

事業承継における知的財産は、経営者の理念、従業員が持つ技術、ノウハウ、取引先、顧客情報、許認可などのことです。これらは企業の収益力に深く関わるものであるため、漏れなく確実な承継が求められます。

人(経営権)

株式会社では、議決権のある株式の保有割合に応じて行使できる権利が決まります。そのため、後継者に会社を承継する際は、全株式を引き継ぐ必要があります。

資産

経営権を承継しても、従業員に認められなければ思うように経営の舵取りができないのが実情です。そのため、従業員に認められるような後継者の選定や育成も重要と言えるでしょう。

事業承継における資産は、事業に使用する機械や不動産、債権や債務などのことです。また、株式も資産の1つです。

参考記事:
事業承継にはどんな方法があるのか?全パターンのメリット・デメリット
M&Aで事業承継補助金を申請する4つのポイント|対象者や募集要項も解説

経営者が事業承継を行うべき3つの理由

生涯現役を志す経営者も、いずれ事業承継を行う時期がきます。いつでも事業承継ができるように、早めに準備を始めることが大切です。ここでは、事業承継を行う主な理由を3つご紹介します。

経営者の高齢化

経営者が高齢になると、体力が低下することで従来通りの経営が困難になる恐れがあります。実際に高齢になってから後継者を探し始めると、実際に事業承継できるのに時間がかかるため、早めに行動を始めることが大切です。

また、高齢になると病気を理由に急遽、事業承継を行うことになるリスクも高まります。

後継者不在による経営リスクの回避

後継者がいない状況で、経営者が何らかの理由で急遽退任することになれば、経営者不在の状況に陥ります。

重要な意思判断ができない、リーダーシップを発揮できない、従業員が誰についていけばいいかわからなくなるなど、さまざまなトラブルが起きるでしょう。

早期に事業承継を実行することで、このようなリスクを回避できます。

企業価値向上

経営者が代わると、これまでの事業とは異なる視点で新たな価値を生み出せる場合があります。その結果、企業価値が上がることが期待できます。

例えば、IT機器やサービスの導入に抵抗がある経営者から、積極的にIT技術を取り入れて業務効率化を目指す後継者に事業承継されると、収益が上がる可能性が高いでしょう。

企業の将来を考えるのであれば、企業価値の向上を目的とした事業承継も視野に入れることが大切です。

後継者不在、解決のカギは事業承継型M&A

事業承継型M&Aは、後継者のメドが立っていない経営者がまっさきに検討すべき手段です。

承継が実現すれば長年営んだ事業を清算(廃業)せずに済み、従業員の雇用を維持できるうえ、ステークホルダーへの影響も軽減することが可能です。金銭面のメリットも見逃せません。

長年築き上げてきた事業価値を引き継いでもらうために、なるべく早くから事業承継型M&Aの情報収集をはじめるとよいでしょう。

M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」では、M&Aを応援をしています。お気軽にお問い合わせください。

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