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ノンネームシートに記載する主な項目を解説|記載時の注意点とは


公開日:2021年5月27日  最終更新日:2022年11月18日

ノンネームシートとは?

ノンネームシートとは、M&Aの際に秘密保持契約書を締結する前段階で、譲受候補の企業へ提示する資料のことです。

秘密保持契約書を締結する前でもあり、機密の漏洩を防ぐため、企業を特定されかねない具体的な情報は記載せず、事業内容や売上なども概算値を記載するにとどまります。A4用紙1枚程度でまとめられていることが一般的です。

IM(企業概要書)との違い

IM(企業概要書)は、Information Memorandumの略で、譲渡企業(売り手企業)や事業等に関する情報を事細かく記載した書面です。一方、ノンネームシートはティーザーとも呼ばれ、譲渡対象の企業の概要を匿名でまとめた書式を指します。

ノンネームシートとIM(企業概要書)の違いは、大きくわけて2つあります。情報量と開示するタイミングです。

ノンネームシートは、企業間で秘密保持契約を結ぶ前に公開されるため、情報量が限られています。一方、IM(企業概要書)は秘密保持契約締結後に開示されるため、企業名を含めて詳細に記載がなされています。その内容は企業の沿革や概要、事業内容、過去の財務諸表とその内訳や分析などを細かく記載したものです。

ノンネームシートもIM(企業概要書)も、譲渡企業(売り手企業)自身やそのM&Aアドバイザーが作成するものであり、どこまで情報を開示するかは譲渡企業(売り手企業)側に委ねられています。つまり、IM(企業概要書)は譲受企業(買い手企業)側にアピールしたいポイントがまとめるのが一般的です。

なお、事業売却先や資金調達先をインターネット上で探すことができるM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」では、IM(企業概要書)の作成に役立つテンプレートを配布しています。参考にしてみてください。

【売り手企業向け簡易版】IM作成テンプレート|M&Aクラウド

【上級者向け】IM作成テンプレート|M&Aクラウド

ノンネームシートが使用されるタイミング

ノンネームシートが使用されるタイミングは、実際に交渉を進めていく段階です。ノンネームシートを使って、譲受企業(買い手企業)候補へM&Aを打診していきます。

つまり、IM(企業概要書)を開示する前段階で使用するということです。ノンネームシートを見て興味を持った企業と秘密保持契約書を締結したあとにIM(企業概要書)の開示を経て、より詳しい情報が譲受企業(買い手企業)へ開示されるのです。

売却の際にノンネームシートが必要な理由

売却の際にノンネームシートが必要な理由は、大きく2つあります。 1つ目は、初期の関心度合いを確認するため、2つ目は、情報漏洩のリスクを少しでも軽減するためです。

この理由をしっかり理解しておかなければ、作成時に戸惑ってしまう可能性があります。それぞれを詳しく解説していきます。

初期の関心度合いを確認するため

売却の際にノンネームシートが必要な理由の1つ目は、初期の関心度合いを確認するためです。ノンネームシートは譲受企業(買い手企業)が秘密保持契約を結んだあと、譲渡企業(売り手企業)が秘密保持契約を結ぶ前に使用するものです。

ノンネームシートにより、M&A交渉を検討する初期段階で、譲受企業(買い手企業)は譲渡企業(売り手企業)側のおおまかな情報を得られます。しかし、情報漏洩を気にするあまり、情報をぼかしすぎると譲受企業(買い手企業)側に自社の魅力や特徴が伝わりにくくなってしまいます。

譲受企業(買い手企業)側に関心を持ってもらえるノンネームシートの作成が必要です。

情報漏洩のリスクの軽減

売却の際にノンネームシートが必要な理由の2つ目は、情報漏洩リスクの軽減です。秘密保持契約を締結する前段階での企業間の情報のやり取りは漏洩してしまう可能性があります。

そのため、M&A交渉の初期フェーズではノンネームシートを使用するのです。

ノンネームシートを利用することで、譲渡企業がM&Aを検討している、という情報の漏洩を防ぐことができるため、取引先や金融機関から不信感を持たれるというリスクが減ります。

ノンネームシートに記載する項目

ノンネームシートの記載で重要なことは、譲渡希望企業側の匿名性が守られていることに加えて、譲受候補企業からの興味を引けるように注意して作成することです。

各項目について詳しく解説します。

所在地

所在地は、「所在地:関東」などのように記載します。

基本的には、首都圏、関東、関西など、地域までを記載します。これは、都道府県や詳細な住所を記載することにより企業が特定される可能性があり、そのリスクを排除するためです。

所在地だけでは特定されない情報だったとしても、ほかの項目と併せて記載することで、組み合わせで特定されてしまう、という可能性もあることも覚えておきましょう。

業種

業種は、「情報サービス業」「製造卸」などのように記載します。

あまりにも詳細な情報を記載してしまうと、特定されやすくなってしまうのはもちろんですが、ほかの項目との組み合せで特定されやすくなることもあるためです。必ずほかの項目と併せてみたときに、特定されないかを確認してみましょう。

また、このとき 記載する業種は中分類がよいでしょう。これは、「小売業」のように分類を大きくしてしまうと、範囲が広すぎて興味を示されにくくなるためです。

従業員数

従業員数は、「約◯名」などとおおよその人数を記載します。

詳細な人数は記載しないようにしましょう。特定の恐れがあるため、役員の数も非公開にしたほうが無難です。どれぐらいの規模かがわかれば問題ありません。

譲受希望企業側が知りたいのは、譲渡企業(売り手企業)の規模であるため、細かい数字は必要ないのです。

事業の強みや特徴

事業の強みや特徴は、「ECモールで2桁の売上成長を2年間継続」などのように記載します。

上述したように、譲渡企業(売り手企業)の持つ事業の強みや特徴を端的に、2〜3個程度記載することが重要ですが、もちろん企業の特定ができる情報は避けましょう。

M&Aは強みや特徴などの経営資源を売買する行為とも言えます。そのため 譲渡企業(売り手企業)の強みや特徴などの情報は譲受企業(買い手企業)にとっては大きな興味に繋がります。しかしその一方で、他社との差別化ポイントとも言えるため、企業の特定がしやすい項目にもなり得るでしょう。

譲渡企業の特徴を記載する上で、良い書き方は具体的な数字は避けることです。譲受企業(買い手企業)側が、「この企業を買収したあとどのような利益が手に入るのか」がおおまかにイメージできるようにすることが大切です。

PL(損益計算書)の記載項目

PLとは、損益計算書とも呼ばれ、英語の「Profit and Loss Statement」を略した言葉です。

損益計算書は、主に会社の利益を知るための決算書類です。記載されている内容は、収益・費用・利益などです。

損益計算書は正確に読み解くことで、利益がどこから出ているかということを把握できます。また、「損益分岐点」をみることもできるため、企業の成績表のようなものだと考えるとよいでしょう。

ここからは、それぞれの項目について詳しく記載例と注意点を解説していきます。

売上高

売上高は、「1.5億円~3億円等」のように、おおまかな範囲で記載します。

売上高は、売上とも呼ばれ、会社の収益を示します。さらに言えば、会社の事業による営業活動の対価として顧客から受け取る収益です。

売上高は、実際に現金が入ってくる時期ではありません。というのも、売上高は原則、商品やサービスを顧客に渡った時点で帳簿上の計算に入るためです。

営業利益

営業利益も、「1,000万円~3,000万円等」のように、おおまかな範囲で記載します。

営業利益とは、その会社の本業で稼いだ利益のことを指します。

営業利益の計算方法は、売上総利益から、販売費及び一般管理費を引いた金額です。

EBITDA

EBITDAとは、Eernings Before Interest Tax Depreciation and Amotizationの略で税引前利払い減価償却前利益のことです。

実務では、営業利益に減価償却費を足して簡易的に計算されます。

業界によっては営業利益よりもEBITDAを重視する業界もありますので、記載されることが一般的です。

経常利益

経常利益も、「100万円~300万円等」のように、おおまかな範囲で記載します。

経常利益は、本業以外で稼いだ収益や、その費用についてまとめたものです。本業で稼いだ収益を指す営業利益とは別のものということがわかります。

経常利益の計算方法は、営業利益と営業外収益から営業外費用を引くと算出されます。

販売費及び一般管理費

こちらも、「500万円~1,500万円等」のように、おおまかな範囲で記載します。

販管費は、販売費及び一般管理費、販売管理費などとも呼ばれます。販売費と一般管理費の合計が販管費です。

販売費は、その会社が商品などを販売するために直接的にかかる費用で、一般管理費は、会社全体の業務の管理にかかる費用を指します。

BS(貸借対照表)の記載項目

BS項目は、貸借対照表、バランスシートとも呼ばれます。これは、 決算日の会社の財産状況を表し、ある一点でどのくらいの資産があるかを知るために重要なものです。

BS項目には大きくわけて3つの項目があります。それが、資産、負債、資本です。

長期借入金

長期借入金は、「1億円~10億円等」のように、おおまかな範囲で記載します。

長期借入金とは、返済期限が1年以上ある借入金です。このような1年以上あとに支払う借金は固定負債と呼ばれます。

役員借入金

役員借入金も、「10万円~110万円等」のように、おおまかな範囲で記載します。

役員借入金とは、役員が会社に貸しているお金のことです。役員借入金は、中小企業で、会社の資本が足りない場合の立替や、法人設立時の費用として立て替えられます。

純資産

純資産も「1,000万円~1億円等」のように、おおまかな範囲で記載します。

資産とは、現金や実際の商品、建物などの固定資産のことを指します。この、資産を会社のものにするときに発生した費用の出どころを表すのが負債と純資産です。

純資産とは、会社自体のお金のことを指し、自己資本とも言いかえられます。株主が出資した資金と会社のこれまでの利益の合計です。純資産は、資産から負債を引いた金額です。

純資産は返済の必要のない資金のため、どれだけあるかで会社の健全性を判断できます。

ネットデット・ネットキャッシュ

ネットデット・ネットキャッシュは、下記のように算出し、おおまかな範囲で記載します。

(現金及び現金同等物)-{(短期借入金)+(長期借入金)+(受取手形割引高)}

ネットデットとは、純有利子負債のことを指します。純有利子負債とは、有利子負債から現預金を控除したものがプラスの状態、つまり借り入れのほうが多い状態です。

一方でネットキャッシュとは、それがマイナスの状態、つまり現預金のほうが多い状態です。ネットキャッシュ企業は、キャッシュリッチ、金余り企業とも言えます。

その他の重要事項

その他の重要事項には、譲渡理由などが含まれ、交渉の重要なキーとなります。

譲渡理由

譲渡理由は、「後継者不足」などのように記載します。

これは 端的にまとめることが重要です。一般的には、「後継者不足」のほかに「自社の発展のため」や「事業発展のため」などと記載します。

希望する株式譲渡、事業譲渡、その他譲渡のスキームについて

希望する株式譲渡、事業譲渡、その他譲渡のスキームについても、端的に、企業名が特定されないように記載します。

株式譲渡や事業譲渡、スキームなどもいままでの項目同様、細かく記載してしまうと企業が特定されてしまうことがあります。匿名状態に留められるような記載内容にしましょう。

希望譲渡金額

希望譲渡金額は、「1,000万円~1億円」のように、おおまかな範囲で記載します。

譲渡希望までの期限が長い場合には強気の数字を出せます。しかし反対に、すぐに譲渡してしまいたい場合には、ある程度妥協した額にする必要があるとも言えます。

金額のほかの条件とも照らし合わせながら、希望譲渡金額を記載します。

ノンネームシートに記載するときの注意点

実際にノンネームシートに記載するときの注意点はどのようなものがあるでしょうか。

この記事では、大きくわけて2つの注意点を解説します。1つが、企業が特定されない範囲の情報にすること、もう1つが、情報を不明確にしすぎないことです。

記載を始める前に注意点を知り、うっかり間違えてしまわないよう気をつけましょう。

企業が特定されない範囲の情報にする

ノンネームシートは譲受希望企業が秘密保持契約を結ぶ前に使用されるものです。

そのため、情報が漏洩してしまうリスクが伴います。このリスクを可能な限り排除するため、 会社が特定されないよう、事業内容や地域、売上規模などの必要最小限の情報のみを記します。

情報を不明確にしすぎない

注意する点の2つ目は、情報を不明確にしすぎないことです。

情報漏洩リスクを恐れるあまりに、情報を不明確にしすぎるケースは多々みられます。あまりに情報を不明確にしてしまうと、譲渡希望企業の魅力や特徴がしっかり譲受希望企業に伝わりません。そうなると、検討がしにくくなってしまいます。

つまり、譲渡希望企業側は、 企業を特定されない程度の内容にすることと並行して、譲渡企業(売り手企業)の魅力や特徴を伝えられる、ノンネームシートを作成することが重要です。

ノンネームシートの理解はM&A成功の第一歩

ノンネームシートは、M&A交渉の最初の段階で使われる、譲渡企業側の情報が匿名で記載された資料です。そのため、 匿名性を保ちながらも、譲受企業(買い手企業)が関心を持てるような内容にすることが肝心です。

ノンネームシートを上手く使ってM&A交渉を有利に進めましょう。

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