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会社が買収された後の待遇はどうなる?買収による3つの変化について解説


公開日:2021年5月28日  最終更新日:2022年11月17日

会社の買収とは

会社が買収された後、契約内容次第では経営者・役員・従業員の待遇は変化します。

本記事では、M&A(Mergers and Acquisitions、会社の買収と合併)の手法である「株式譲渡」と「事業譲渡」の例をもとに、会社が買収された後の待遇の変化、手続きの注意点についてご紹介します。

参考記事:株式譲渡を行うメリット5つ|主な手続きや注意点もあわせて解説|M&A to Z

参考記事:事業譲渡のメリットとデメリット15選|契約完了までの流れも徹底解説!|M&A to Z

会社の買収の定義

会社の買収とは、自社以外の会社の株式を「株式対価」や「現金対価」で取得し、一定割合以上を保有することで経営権を得る行為です。

買収者(買い手企業)が発行済み株式の過半数を取得すれば、取締役の選任および解任などに必要な「普通決議」を成立させることが可能になります。

また、株式の3分の2以上を取得すると、組織変更や株式併合、事業譲渡といった重要な決定に欠かせない「特別決議」を成立させることが可能です。

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会社が買収された場合の待遇は?役職別に違いを説明

会社が買収されると、社長・役員・従業員の待遇が変わる場合があります。それぞれの役職別に詳しく説明します。

1:経営者

買収された側の経営者の待遇は、買い手企業が決定します。経営者を交代した方が今後の経営に良いと判断された場合は退任を迫られ、続投の方が良いと判断された場合は現状維持を求められます。後者の場合は、当然ながら経営者自身が続投するかどうかを決定できます。

実際には、数ヶ月~2年程の期間限定で、会長や顧問、相談役といった立場で会社に残るよう要請されるケースがほとんどです(ロックアップ)。その際の報酬を買収前の報酬から増額・減額する場合は、普通決議で可決する必要があります。

2:役員

買収前の役員の勤務形態が常勤か非常勤のいずれに該当していたかで、買収後の待遇が異なります。非常勤役員の多くは、買収後に退任します。これは、形だけ役員に就任しており、実質的な権限を握っていなかったり、実務に携わっていない非常勤役員も多いためです。

一方、常勤の場合は、実質的な権限を握っており、実務にも深く携わっているケースが多く、退任かするかどうかは「買い手企業の状況」や「役員の力量」「従業員に対する影響力」などで決まります。

買い手企業としては、買収先企業の企業風土、業務内容、取引先などの理解が十分ではないうちは、役員の続投を依頼した方が得策といえます。そのため、役員の力量や買い手企業の状況などによっては、続投を依頼されるでしょう。

また、買収された企業(売り手企業)の役員が、代表取締役社長に任命されるケースも少なくありません。一方で、役員が力量不足の場合は、買い手企業が売り手企業を深く理解している場合には、といった場合は「退職」か「社員への変更」を依頼されます。

3:従業員

買収後に従業員の給与が減額されることを危惧する経営者は少なくありません。確かに、買収された後は、人件費の削減や人員の整理を目的に、大規模な人材の再配置が行われ、給与も減額される場合もあります。

しかし、 従業員の給与は変動しないケースがほとんどです。仮に、従業員の給与を下げると生産性の低下や退職リスクの増加などが起こります。さらに、買い手企業の従業員とのチームワークによるシナジー効果を得ることが難しくなる可能性があります。

そもそも、「従業員の雇用・待遇維持、あるいは改善」を会社売却の条件に掲げ、契約内容に盛り込むケースもあり、その場合は雇用条件の悪化やリストラなどは発生しません。

また、株式譲渡によって会社そのものを譲渡する場合は、退職金制度もそのまま引き継がれるため、退職金を受け取れなくなることもありません。

買収された場合に売り手企業に起こる3つの変化

会社が買収されたときに売り手企業内で変化するのは、「退職金」「賃金」「買い手企業及び従業員との関係性」の3つです。

1:退職金

会社買収の中でも 「株式譲渡」は、会社そのものが買い手企業に譲渡されるため、雇用契約もそのまま引き継がれます。また、労働条件が変更になることも基本的にはないため、退職金制度も変更されません。

一方、 「事業譲渡」の場合は、雇用契約をそのまま引き継ぐのではなく、買い手企業と自社の従業員が改めて雇用契約を締結することになります。その際に、退職金の対象外になったり、退職金が増額・減額されたりする場合があります。

雇用契約の締結は従業員と買い手企業の双方の合意が必要なため、退職金の減額や廃止を理由に雇用契約の締結を拒否する従業員も少なくありません。なお、当然ではありますが、従業員には買い手企業へ転籍する前に、現在の会社の退職金制度に基づいた退職金を受け取る権限があります。

また、経営者・役員の退職慰労金は、従業員の退職金と扱いが異なります。退職慰労金を支給すると、株式譲渡代金がその分減少するため、結果的に受け取れる金額はほとんど変わりません。ただし、株式譲渡代金と退職慰労金でかかる税金は異なります。

また、退職慰労金を受け取るには、買い手企業が開く株主総会で退職慰労金の支給を決議しなければなりません。

2:賃金・報酬

「株式譲渡」の場合は、現在の会社の労働条件が引き継がれます。

一方、 「事業譲渡」では買い手企業と従業員の間で雇用契約を締結し直すことになるため、スキル・資格・経験などに応じて賃金が変化する可能性があります。

現在の会社にとって優れたスキルを持っていても、買い手企業が求めるスキルではない場合は、賃金が下がることもあるでしょう。

反対に、現在の会社に求められていないが買い手企業が求めるスキルを持つ場合は、賃金が上がる可能性があります。経営者・役員が続投する場合も、買い手企業の考え方や方針、報酬制度、力量や業務内容などによっては報酬が変化します。

また、賃金とは異なりますが、福利厚生が変わることも確認が必要です。福利厚生による各施設の割引サービスや住宅手当、法定外の育児・介護休暇などがなくなると、会社から受け取る対価が減少したことになります。

3:当事者企業同士の関係性

自社と競合関係にある企業に買収された場合、ライバル関係から協力関係に変わります。従業員の待遇改善を条件に買収されることを承諾した場合は、「自社の危機を助けてくれた企業」という関係性になるでしょう。

その他、自社と買い手企業の従業員の関係性も変化します。これまで、他社製品に勝る製品の開発を目指していた従業員が、その他社の従業員と協力し、より良い製品を生み出すために協力し合うことになります。

その一方で、自社と買い手企業の従業員で業務の進め方が異なるために、業務効率が低下する場合もあります。業務マニュアルの整備と従業員同士が協力し合う姿勢を持つことで、高いシナジー効果が生まれ、結果的に自社の従業員にとって良い結果になることが期待できます。

買収の手続きで注意すべき事

M&Aの成立には、最終譲渡契約書の締結が必要です。事前に行ったトップ面談で取り決めた内容が契約書に全て盛り込まれているか確認しましょう。

自社にとって不利な内容や、交渉で取り決めた条件とは異なる条件が記載されているのに気づかずに契約締結すると、多大な損害を被る恐れもあります。

また、買収された後は株主総会にて新役員が選任されます。もし、役員の続投を希望するのであれば、事前の交渉で買い手側のトップと諸条件を固めておきましょう。

また、会社の経営権を譲渡したい場合は「株式譲渡」、事業の一部あるいは全てを譲渡したい場合は「事業譲渡」など、M&Aの手法を適切に選ぶことが重要です。このとき、従業員の待遇改善を条件に掲げるのであれば、買い手企業と雇用契約を改めて締結する事業譲渡を選ぶとよいでしょう。

ただし、M&Aを行う他の目的も踏まえ、株式譲渡と事業譲渡のどちらを選ぶべきか決めることが大切です。

また、買い手候補の企業の買収スタイルにも注目が必要です。買収には、買収先企業の経営陣の賛同を得て買収する「友好的買収」と、賛同を得ずに買収する「敵対的買収」があります。なお、敵対的買収は、総株主の議決権の過半数の取得を目指し、買い手企業が証券取引所を通さずに大量の株式を買付けるTOB(株式公開買付け)の手法用いることが一般的です。

敵対的買収による買収を不本意とするならば、ゴールデンパラシュートやマネジメント・バイアウトといった買収防衛策を講じると良いでしょう。成功すれば、買収に対する意欲を失わせることができます。

参考記事:TOB(株式公開買付け)とは?種類や事例、TOBをする企業・される企業のメリットなどを解説|M&A to Z

 M&Aは、成立後の待遇について考慮した上で検討しよう

買収後は、経営者は退任するか期間限定で会長や顧問などに就任し、役員は退職するか続投、あるいは代表取締役社長に就任することもありえます。

従業員は、株式譲渡では雇用契約が引き継がれますが、事業譲渡では雇用契約を締結し直すことになるため、賃金が増減する可能性があります。

買収された後の待遇については、事前の交渉で固めておき、納得したうえでM&Aを進めることが大切です。

待遇に関する交渉の進め方や不明点については、買い手側のトップとよく確認するとともに、必要があればM&Aアドバイザーをつけて相談するようにしましょう。

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