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会社の身売り(事業承継)の6つのメリット|事業承継の注意点についても解説


公開日:2021年6月11日  最終更新日:2022年11月18日

会社の身売り(第三者事業承継)とは、第三者の個人や企業に対して会社を売却することを指します。会社の株式を譲渡したり合併・株式移転をさせるパターンが多くあります。本記事では、身売りをするメリットや注意点について詳しくご紹介します。

会社の身売り(事業承継)とは

会社の身売り(第三者事業承継)とは、主に会社の売り手側の視点から、親族や社員に会社の事業承継をできない場合において、第三者の個人や企業に対して会社を売却することを指します。 日本においては、身売りという言葉がM&A(Mergers and Acquisitions・企業の合併と買収)の俗称として利用されているケースも多くなっています。

『中小企業白書 2019年版』によると、2018年の時点で中小企業経営者の年齢分布は69歳がピークとなっており、1995年の47歳という調査から23年間で年齢分布のピークが22歳上昇していることになります。

また中小企業庁が『事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)』で提示した資料は、経営者の平均引退年齢は小規模企業で67.7歳、中規模企業で70.5歳となっており、経営者の平均年齢が引退時期に近づいてきていることが明らかとなっています。

しかしながら、帝国データバンクが2020年11月に公表した『全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)』によると、後継者不在率は全国で65.1%に達しており、これから引退時期を迎える企業経営者も、後継者探しに苦労することが予想されます。

後継者が見つからなければ、引退したくても無理をして経営を続けるか、廃業(清算)するほかありません。このような後継者不在の解決策として近時注目されているのが、会社の身売り(第三者事業承継)です。

第三者事業承継の具体的な方法としては、会社の株式を譲渡したり、合併・株式移転をさせたりする場合と、事業譲渡によって事業だけを切り離すといったケースがありますが、本記事では前者を中心にご説明します。

出典:中小企業白書 2019年版|中小企業庁

出典:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)|帝国データバンク

会社の身売り(第三者事業承継)の定義と目的

会社の身売り(第三者事業承継)について、その定義と目的とは何でしょうか。

会社の身売り(第三者事業承継)とは、会社の資産・負債や製品、ブランドなど事業に関連するものをすべて第三者に引き継ぐことです。「第三者」については、従来は法人が承継先になることがほとんどでしたが、近年ではM&Aマッチングプラットフォームなど手軽に発展に承継先を探す手段が充実したことにより、個人に承継するケースも増加してきています。

会社が身売り(第三者事業承継)する目的は、大きく分けて3つあります。

 1点目に、社員や技術、顧客を引き継ぐ目的です。
先ほどデータを示した通り、多くの中小企業の経営者は後継者がおらず、かつ引退時期が近づいてきています。

経営者に万が一のことがあったり、体調悪化などで廃業しなければならなくなった場合に、社員を路頭に迷わせてしまう可能性があります。

これまで大切にしてきた取引先との取引を中断することで、相手に迷惑をかけるおそれもあります。長年にわたって積み上げてきた技術が散逸してしまうことは、社会的な損失にもつながりかねません。

一方で、会社を身売り(第三者事業承継)することができれば、社員も技術も顧客もそのまま引き継ぐことが可能です。したがって、社員や技術、顧客を引き継ぐことを目的に会社が身売り(第三者事業承継)をするケースが特に中小企業で多くなっています。

2点目に、廃業(清算)よりもコストを抑えて引退するためです。

廃業(清算)をしようとすると、会社の清算手続きをする必要があります。清算手続きでは、会社の資産を全部売り、それを元に借入金を返済して、余ったものを経営者が受け取るという形になります。


しかし、会社を清算する際に資産を売却すようとすると機械や在庫は簿価の20〜30%程度でしか売れないこともあります。そのようにして簿価よりも低い価格で資産を売ろうとすると、会社が債務超過状態になってしまい廃業できない状況になることも考えられます。

当然、清算手続きを行うのにも税理士などに依頼する費用が追加でかかります。

一方で、会社を身売り(第三者事業承継)をすることができれば、資産は簿価で引き継ぐことが可能なため会社が債務超過になることはなく、交渉によっては保険や不動産など必要なものだけを経営者が承継することも可能です。

3点目に、創業者メリットを得るためです。

創業者メリットとは、簡単に言えば、会社の純資産よりも高値で会社を売却することで、経営者が得られる利益のことです。

なお、譲渡価格は会社の経営状態や事業内容・ブランド・技術力といった多岐に渡る項目について買い手との交渉によって決定するため、必ず創業者メリットを得られるわけではありません。しかし、第三者事業承継により実際に創業者メリットを得られたケースも多数存在しています。

会社の身売り(事業承継)をする6つのメリット

では、会社の身売り(第三者事業承継)を行う上でのメリットとはどのようなものがあるでしょうか。前述した目的以外にも、大きく分けて6つのメリットが存在しています。

1:経営者の早期引退が可能になる

経営者が早期引退を行うためには、引退のための資金と、引退するために会社を引き継ぐ人材の両方が必要となりますが、身売り(第三者事業承継)であればその両方を解決することが可能です。

資金面では、事業承継を行うことで資金を得ることができるケースも多く、退職金代わりに早期引退を実現することも可能です。

人材面では、買い手から優秀な人材が入社するケースもあり、社内の古株メンバーや自身のご家族をサポートしてくれる可能性があります。

他にも、経営者が初期的に顧問などとして株主総会や重要な会議に関与することで、スムーズに買い手の企業との融合を図り、早期引退をより確実にするケースも増えています。

2:後継者問題を解消できる

次に身売り(第三者事業承継)のメリットとして、事業承継によって、後継者不在を解決することが可能です。

親族や社内で承継する場合であれば、後継者を社内外で育ててから引退することが必要となり、10年単位で承継の計画を立てる必要が出てきます。引退をしようと考えてからもなお、数年から十数年は引退できないケースもあるのです。

一方で 身売り(第三者事業承継)の場合には、買い手の経営者や幹部が売り手の経営者になるケースもあるため、後継者育成を長い年月をかけて行う必要がなく、承継のための時間的に大幅に短縮することが可能です。

3:個人保証・連帯保証からの解放される可能性も

身売り(第三者事業承継)を行うことのメリットとして、個人保証・連帯保証から解放されるという点があります。中小企業の多くは金融機関の借入に際して、経営者の個人保証や連帯保証を求められるケースがほとんどです。

その場合に親族や従業員に継承する場合には、継承する人が個人保証や連帯保証も引き継ぐ必要があり、場合によっては承継者の信用力の問題で引退した経営者が金融機関から保証の継続を求められる場合もあります。

一方で 身売り(第三者事業承継)を行う場合には、買い手との契約書の中で、個人保証・連帯保証を買い手が引き継ぐことを譲渡の前提とすることを約し、金融機関から了承を得ることで、個人保証・連帯保証から解放されます。

事業承継が進まない理由として多額の個人保証・連帯保証が問題となることも多いため、身売り(第三者事業承継)は、個人保証・連帯保証から解放される数少ない手段のひとつとして注目されています。

4:譲渡益の獲得も可能

身売り(第三者事業承継)のメリットとして、譲渡益の獲得が可能となるケースがあります。

会社の純資産を超える価格で買い手との売買が成立した場合に、株式譲渡・合併・株式移転の場合には経営者(株式を持つオーナー)に資金が入ってくるため譲渡益を得ることができ、創業者メリットを享受することが可能です。

なお、事業譲渡の場合には譲渡益は会社に入ることになりますが、その資金を退職金で受け取るなどして、低い税率で譲渡益を得ることも可能です。

5:廃業(清算)の費用をかけずに済む

さらに、身売り(第三者事業承継)によって、廃業(清算)の費用削減が可能となります。

廃業には清算をするためのコストと、廃業(清算)のために資産を売却する際のコスト、そして簿価よりも安く売却することで失うコストがあります。特殊な機械などは価格がつかないこともあり、そのまま使い続ける場合に比べてメリットが出ません。

一方で 身売り(第三者事業承継)なら、資産をそのまま売却することができるだけでなく、買い手との交渉によっては、不動産や保有株式など資産を高く評価してもらうことも可能です。

6:事業を成長・拡大させることもできる

第三者事業承継により、事業をさらに成長・拡大させることも可能です。

自社単独で事業を大きく拡大・成長させていくためには、資金力、優秀な人材、事業拡大のノウハウが必要ですが、これを社内でそろえようとすると、中小企業には難易度が高いケースも多くあります。

一方で 身売り(第三者事業承継)であれば、譲渡後に買い手のネットワークを活用して営業を行ったり、優秀な人材をシェアすることができたり、資金提供を依頼することも可能です。

特に技術力はあるが、営業力はないといった場合に、営業力のある企業に身売り(第三者事業承継)することで、よりスピーディに事業の成長・拡大を図ることが可能になります。

身売り(事業承継)した後の経営者の処遇はどうなる?

身売り(第三者事業承継)を行った場合の経営者の処遇は、買い手との交渉により異なります。

同業で買い手がすぐにそのまま事業を承継できる場合には、譲渡と同時に引退するケースもありますし、一時的に顧問などとして残り、その後半年から1年後に引退するというケースもあります。

また事業の拡大・成長を目指して身売り(第三者事業承継)をする場合などでは、子会社の社長として継続的に事業に関わる経営者もいます。一方で、ロックアップ(後述)が課されるケースもあります。

会社の身売り(事業承継)の3つの注意点

ここまで会社を身売り(第三者事業承継)する際の目的と6つのメリットをみてきました。経営者は個人保証や連帯保証を解除される場合があり、廃業のコストかけずに創業者メリットを得て、引退をすることが可能となる場合が多くあります。

しかしながら、会社の身売り(第三者事業承継)については、検討前に以下の3点を知っておくと良いでしょう。

1:ロックアップが発生する可能性もある

ロックアップとは、会社の売却後、一定期間退職ができないという契約条件のことです。

買い手が未経験の分野の事業を買収したりする場合に、ロックアップ条項が付されるケースがあります。ロックアップは通常1年から3年と中長期に渡ることが多く、その間はこれまでと同様に会社の経営を行っていく必要があります。

2:同業の事業をできなくなる場合もある

身売り(第三者事業承継)により、同業の事業ができなくなる場合もあります。

事業譲渡の場合には、会社法21条1項により、譲渡後20年間は同市町村および隣接市町村で20年間(特約がある場合は30年間)、同業の事業を行うことができません。ただし、契約書で期間を明示して変更する場合もあります。

株式譲渡や合併の場合には会社法の明文の規定はありませんが、会社を売却したにも関わらず同業の事業をスタートしてしまうと、買い手の事業と競合してしまうため、契約書に競合避止義務の条項を設ける場合が一般的です。

この条項がある場合には、同業を新たに開始したり、買収して同事業を行うことは禁止される点に注意が必要です。

3:個人保証・連帯保証が解消されない場合もある

会社を身売り(第三者事業承継)をする際に、個人保証・連帯保証が解消されない場合があることを説明しましたが、これは 会社に多額の負債があったり、慢性的な赤字体質であったりする場合に、多く見られます。

従って、売却前から負債の整理や赤字の解消につとめる必要があります。

なお、赤字の企業を高い値段で買いたいと考える買い手は少ないため、経営者が売却益を得ることができる可能性も下がります。

会社の身売り(事業承継)の検討時・実行時に心がけるべきポイント3つ

先にご紹介した3つの注意点を踏まえたうえで、会社の身売り(事業承継)を検討・実行する際に心がけておきたいポイントがいくかあります。本記事では、主な項目を3つ解説します。

1:売却条件の設定とアピールポイントをまとめる

売却前に自社の条件とアピールポイントをまとめておく必要があるという点です。

身売り(第三者事業承継)をするにも、 どのような相手に、どのような条件であれば行うのか、あなたの会社のどこを評価してほしいのか、という点が曖昧なままでは、適切な買い手と出会うことができません。

従業員の雇用を確実に守ってほしい、技術を引き継いで欲しい、などの条件であったり、営業力に強い会社と組みたいなど相手の選定基準、技術力があり、賞を得たことがある、大手との取引実績があるなどアピールポイントも3〜4点簡単にまとめておく必要があります。

2:買収先をしっかり選定する

買収先をしっかり選定するのもポイントです。

ここを適当にしてしまうと、譲渡する際は従業員の雇用を守るといったのに半年後には解雇されていた、既存顧客をないがしろにして、新規顧客獲得ばかりをしているといった問題が発生する場合があります。

また、カルチャーが合わないために社員が退職したといった場合や、雇用条件が悪化し、退職に繋がったという話もよく耳にします。

買収先は安定した基盤があるのか、自社と経営理念やカルチャーが合致するのか、雇用条件はきちんと維持されるのか、を確認した上で、選定をする必要があります。

3:M&Aについて従業員に前向きな説明を行う

最後に、身売り(第三者事業承継)の際の従業員説明を前向きに、そして適切に行う必要があるという点です。M&Aが失敗するケースの多くは、従業員のモチベーションが下がり、退職に繋がったり、生産性が下がったりするケースが多くあります。

その問題は、なぜ身売り(第三者事業承継)を行う必要があるのか、行うと 従業員にどのようなメリット・デメリットがあるのか、ないのかという点を丁寧に説明する必要があります。

譲渡日には相手先の経営者と一緒に発表し、その場で、会社説明や質疑応答をするケースも多くみられます。

一方で早く従業員への説明で失敗するケースもあります。社員が不安がって退職したり、外部に情報が漏れるリスクがあるためです。

したがって、従業員への説明を行うタイミングは、譲渡が確実に行われることが決定してからでよいでしょう。

後継者不在の悩みは第三者事業承継で解決できる!

会社の身売り(第三者事業承継)には、後継者不在の解決や経営者の早期引退、創業者メリットの確保、個人保証・連帯保証からの解放といった多様なメリットがあります。

注意点を踏まえて、慎重に相手先を選びながら、会社自体の負債解消や赤字解消を行っていくことで、経営者が安心して引退することが可能となります。

インターネットで承継者承継者候補を探せるM&Aマッチングプラットフォームなどもうまく活用しながら事業承継を成功させましょう。


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