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スタートアップ経営者がM&Aで感じた「資金調達とのバリュエーションの違い」とは?


公開日:2021年7月9日  最終更新日:2021年7月12日

スタートアップやM&A界隈で活躍されている方々をゲストとしてお招きし、当社代表・及川との対談動画を配信している「及チューブ」。今回は「スタートアップのM&A」をテーマにOurPhoto株式会社の創業者である平野 歩氏をゲストにお迎えしました。

2015年にOurPhotoを創業した平野氏は、数々の資本業務提携を経験した後、株式会社うるるへ売却。M&A Exit経験者として語られた「資金調達とM&Aでのバリュエーションのギャップ」「売却にあたっての既存株主への説明」「グループイン後の心境」など、そのリアルな心境が好評だったため、その模様を前編と後編に分けてお伝えします。

■ゲスト:平野 歩氏(OurPhoto株式会社 代表取締役)

平野 歩氏

大日本印刷にてクライアントの販促支援・経営企画、米国サンフランシスコで新規事業立ち上げのリーダーを経験したのち、2015年6月に「新しい写真文化を作る」をビジョンに、OurPhoto株式会社を起業。2020年12月、「えんフォト」を運営する株式会社うるるに売却。第3回Globis Venture Challenge優秀賞。

OurPhoto株式会社 概要

日常の貴重な瞬間を撮影する「カジュアルフォト」を希望する依頼者と、写真を撮る機会を探しているフォトグラファーをダイレクトにつなげる出張撮影マッチングサイトを運営。

■ホスト:及川 厚博(株式会社M&Aクラウド 代表取締役CEO)

2011年在学中にマクロパスを創業し、オフショアでの受託開発事業を4年で年商数億円規模まで成長。事業売却をした際に、企業価値の算定と買い手探しには大きく悩まされた。これらの課題をテクノロジーの力で解決したい想いから、M&Aクラウドを設立。

スタートアップM&Aは事業成長を加速させる選択肢の一つ

及川:まず初めに大日本印刷から起業される方っているんだなと、びっくりしました。

平野:いわゆる“レガシー産業”なので、起業する人は少ないかもしれないです。逆に、「 大企業からでも起業はできる 」とアピールしていきたいと思っています。

及川:ありがとうございます。さっそくですが、今回の売却先である「うるる」さんと、どういう形で出会われ、なぜ選ばれたのかを聞かせていただきたいと思います。

自社の「価値」や「価格」の付け方が分からず…

平野:そもそも 売却自体は一つの選択肢 で、ほかにもいくつかの選択肢がありました。資金調達をして、自分たちの運営力で会社を大きくしたり、資金調達をせずにグロースさせていったり。

そのなかで会社やサービスがより大きく伸びる方法が、今回の「うるる」さんとのM&Aだったと考えています。 会社の売却がゴールではなく、会社を伸ばす一つの手段として選択 したということですね。

2015年に会社を設立し、サービス展開してきましたが、毎年1社~2社くらいから「会社を売ってほしい」と言われていました。デューデリジェンス(DD)も2回くらい受けたのですが、 どのように自分たちの会社に価値、価格を付けるべきなのか 分からなくて……。

その基準となるような、ある種の物差しを得ようと思い、仲介会社に紹介してもらって「うるる」さんにつないで、いただいた形です。

及川:今回は何社くらいと会われたんですか?

平野:数社ですね。それまでの方が数は多かったです。

及川:今まで資本提携されてきたのは「キヤノンマーケティング」さんを含め、すべて大きい会社ですよね。「うるる」さんは上場ベンチャーみたいな感じだと思いますが、やはり全然違いますか?

平野:これまでにも「キヤノン」さん以外の大きい会社から出資とか、事業売却みたいなものもありましたがやっぱり違いますね。「うるる」さんはマザーズに上場して2~3年のベンチャー感が強い会社なので。事業提携するにあたっても、 ベンチャー上場した会社と、大企業とでは全然違う んだなというのは肌で感じました。

及川:僕も「うるる」さんとご一緒したことがあるのですが、比較的早く社長が出てこられますよね。だから話しやすいのかなって。

平野:そうかもしれないですね。

シナジーよりも“目線”で売却

及川:売却に至るまでの心境の変化を聞かせていただけますか?

平野:心境の変化という意味では、そもそも会社を売ることを『EXIT』と言いますよね。 「売却=EXIT、出口、終わり」 みたいな感じだと思うんですけど、本当はそうではなく 事業なり、サービスを伸ばしていくための手段 の一つに過ぎないと思っています、建前としては。

とはいえ、やっぱり、オーナー権がある自分の会社が人様のものになる、というのは正直、 心理的なハードル はありますよ。葛藤というか、本当にこれでいいのかどうか、毎日悩んでいました。

及川:上場という道もありますし、VCから調達して別の血を入れてやるというのも、選択肢としてはありますもんね。

平野:そうですね。いくつかある方法の一つかなと思います。

及川:M&Aクラウドとしても、今回の平野さんのように利確ではなく、事業を伸ばすためにM&Aという手段を活用する起業家が増えたら、日本は絶対に良くなると思っています。「うるる」さんのどこに事業シナジーを感じて一緒にやろうと決めたのですか?

平野:事業シナジーという意味では、「うるる」さんも写真サービスの事業を持っています。幼稚園や保育園にカメラマンを派遣したり、そこで写真を販売する「えんフォト」というサービスがすでにあるので、そこでのシナジーはあると思っています。

ただ、 事業シナジーよりも、どちらかというと目線 ですね。自分たちが持っている目線と、「うるる」さんの担当者さんや、社長が持っている目線が合致したことが一番大きかったです。

日本のスタートアップM&A、バリュエーションはこう決まる

及川:実際にグループインして、シナジーをつくるプロジェクトチームにも担当役員がつき、その役員も平野さんが握れているような状態でやっているのでしょうか?

売却後の事業計画と売却価格はどう決まる?

平野:あくまでも私が代表取締役なので。私の意思や考えを尊重していただきながら、親会社として「もっと伸びる方法はないか?」ということをやっていただいています。 「経営力が強化された」 という感じが強いです。

及川:グループインする手前からディスカッションをガンガンしてワクワクした、みたいな感じでした?

平野:そうですね、半年くらい話をしてきたので。

及川:長いですね。

平野:ディールが終結するまでなかなか時間がかかるものなんだな、と。そのなかでディスカッションして、目線をすり合わせていった感じです。

及川:相当、事業シナジーを感じたうえでバリュエーションを決めたのかなと思いますが、ディールの成立前に「このシナジーは確実に出るぞ」というところまで、しっかり詰めた感じですか?

平野:会社を売るときに価格はもちろん重要なポイントです。そこで9割くらいは決まるか、決まらないか分かれるのかなと思います。

まずは事業計画。今後どうやって自社が、もしくは「うるる」さんのサービスが伸びていくか、 議論を重ねた上での事業計画があり、それに沿っての金額 になります。そこのディスカッションは相当しました。「うるる」さんとしては、ある程度シナジーを乗せた評価になっているのかなと思います。

M&Aは資金調達よりバリュエーションがシビア?

及川:これまでアクセラレーターにも出て資金調達をされてきているので、いわゆる事業会社からの資金調達で付くバリュエーションと、M&Aでのバリュエーションのギャップに悩まれていたのかなと勝手に推測しているのですが。

平野:ものすごくいいポイントですね。 事業会社やVCが出資する際の指標と、M&Aをする際の会社の価値は全く違う物差しで測られている ので、そこはなかなか折り合いがつきません。M&A全体の数が大きくならない要因の一つかな、とも思っています。逆に「M&Aクラウド」さんに聞きたいんですが、なんでそこに差があるんですかね?

及川:事業会社の出資とVCの出資でも、若干バリュエーションのプライシングのやり方は違うんですが、基本的にマイノリティ出資はIPOが出口になるので、IPO後にどれくらいで売れるかという逆算で決まるんです。

M&Aの場合、保有したままリターンを出していくので、どっちかというとDCF寄りなんです。 DCFのバリュエーションと、マルチプルのバリュエーションの違い ですね。

参考記事:DCF法とは?DCF法による企業価値評価のメリット・デメリット|評価のポイント5選|M&A toZ

参考記事:マルチプル法による企業価値算定で使う指標を解説|メリット・デメリットも紹介|評価のポイント5選|M&A toZ

平野:DCFは利益を見られるので、足元の利益だとか事業計画の固さ、確実性が相当織り込まれますよね。

及川:その通りだと思います。特に、のれんの償却費が上場企業には重たく、IT企業はだいたい5年で償却するので、 5年くらいのスパンで営業利益がのれんを上回れるか をすごい見ます。

参考記事:のれんとは?M&A成功のために知っておきたい「のれん」の評価の高めかた、減損の防ぎかた |評価のポイント5選|M&A toZ

参考記事:負ののれんが発生するM&Aとは?|負ののれんの原因、売り手企業と買い手企業に与える影響|評価のポイント5選|M&A toZ

平野:そうしないと減損になって株価に影響しますからね。

及川:そこが大きい違いかなと思います。

平野:たとえばマルチプルで時価総額を出して、VCもしくは事業会社から出資を受け、企業価値が付いていても、実際M&Aされるとそんなにいかないケースもあるんですか?

及川:めっちゃあります。 マルチプルを維持してでも買いたいかどうか が論点になります。それで買って、失敗してきてる過去の例があるので。

某ゲーム会社のM&Aとか、そういうのが多いんですけど。ただ、「ソラコム」さんは一つ成功事例になりそうなので、あれがしっかりIPOしていくと話が変わってくるのかな。

参照:株式会社ソラコムの子会社化について|KDDI株式会社

参考記事:2017年度編集部が気になったM&A-中小ベンチャー・スタートアップ編-|M&A toZ

参考記事:国内スタートアップM&Aの買収価格TOP10|過去5年の利益率順でご紹介|M&A toZ

マルチプルを維持してでも買いたいという、買い手側の切り口でいうと、イノベーションのジレンマみたいな。そのスタートアップが強くて、自社の事業を将来脅かす重要なファクターとなりそうだったら早く青田買いしたい、という。

それでハイバリュー付けて買うのは、日本でもIndeed社の例がありますよね。なので、 大企業側の超ヤバい経営課題にヒットしてるかどうか が、一つの論点になります。

参照:米国Indeed Inc.の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ|株式会社リクルートホールディングス

平野:逆にヒットしてないと、高い価値にはなりづらいのが現実なんですかね。

及川:という気はします。こちら側がシナジーを感じていて伸ばせると思うところがあったとしても、相手側の経営課題にヒットしているのかで変わってもきます。

ヒットしているのが、相手側にとっての経営オプションというか、「新規事業の一つとして、これくらいの利益を出したい」というところだとすると、シビアにROI見てやるのかなと。

平野:M&Aの実態としてシビアに価格査定されることは、世の中の一般的には知られてないと感じます。 価格付けに関して、起業家サイドと事業会社サイドのギャップは相当大きい

ここがすり合わないからなかなか価格が折り合わず、結局キャピタルゲインも折り合わず、他の株主からの意見も折り合わず、M&Aが進まないんじゃないかと思っているところです。

及川:おっしゃる通りですね。全然違う物差しなのに、みんな同じ「バリュエーション」という言葉で話すので。このあたりは「M&Aクラウド」としても課題感を持っているのでいろいろやっていきたいなと思います。

平野:日本のスタートアップのM&Aの課題ですね。

買い手のIR戦略に注目

平野:日本のスタートアップのM&Aって、実態としてはいくらが多いんですか?

及川:10億はいかないですね。 2~3億が多い と思います。というのも、10億くらい超えてくると、日本でも買える企業が減ってくるので。

M&Aは同業他社が買うことが多いんですけど、ネット系の大きいところは限られているので。そこにかからないとすると、上場ベンチャーが買う。となると、のれんとか加味するとやっぱり5億円、もしくはそれより下が手を出しやすいケースが多いです。

平野:今、マザーズの上場基準は、売上10億で営業利益が2億あたりが、一つの基点になっていると思います。そこに到達して上場した後、次の成長を考えなきゃいけないときには、他社をM&Aすることも選択肢になる。

ただ、自分たちの営業利益が2~3億だとすると、なかなか赤字にはできないし…というところもあって。結局、買える金額感はその会社の規模によって決まっちゃうのかなと。

及川:今のはすごくいいポイントですね。

僕が売り手さんにM&Aのアドバイスをするときに、買収予算がどのくらいあるかも重要なんですけど、 事業会社側のIR戦略のなかで、どういう営業利益を出していくかという計画 がありますよね。

そこにM&Aによって、自社の事業の営業利益・成長率が足されたときに営業利益・成長率が下がってしまって、それがもともとの投資家の期待にそぐわないとなると、そんなにバリュー付けなかったりする。なので、 目線としては、営業利益の規模と成長率 ですね。営業利益伸びてません、となると結構困ります。「正直、下がってませんか?」みたいな話になります。

あとは、 IR上で利益を伸ばすことを打ち出しているのか、トップラインにフォーカスしているのか という点もあります。営業利益やボトムの利益はある程度、フラットでも大丈夫で、トップラインを伸ばしてます、という会社だったら、それなりに耐えられるんですけど。そことの見合いは一つあるかなと。語られない真実ですね。

平野:IRは株価に反映され、企業価値、時価総額にも影響しますからね。(後編に続く)

                   

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