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廃業(清算)する企業が増えている原因とは?廃業のデメリットと廃業を回避方法も解説


公開日:2021年7月16日  最終更新日:2022年11月18日

近年、労働人口減少や後継者不足が原因で廃業(清算)する企業が増えています。経営者の高齢化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響などもあり、2020年の廃業件数は過去最多を記録しました。当然ながら、廃業は多くの利害関係者を巻き込むため、状況に合わせて適切な選択しなければなりません。例え廃業しか選択肢がないと思われる状況でも、まずは会社を存続させる手段を検討する必要があります。

廃業の定義と、閉店・倒産・休業・経営破綻との違い

「廃業」とは、それまでの事業を“自主的に”やめることをきっかけに、企業そのものが消滅することを意味します。廃業を決定した後は、残された会社債務を支払うための会社清算手続きに移行します。

廃業と混同されやすい言葉に閉店、倒産、休業、経営破綻がありますが、それぞれ内容や、必要になる法的手続きが異なります。

ここでは「廃業」の意味をより明確にするため、まずは一般的に意味を混同しやすい概念との違い説明します。

1:閉店と廃業の違い

閉店とは事業をやめて店を閉じることを意味します。単一の店舗しか持たない企業が閉店する場合は、事実上の「廃業」と同じ状態になるケースもありますが、数店舗を経営する企業が特定の店舗のみを閉店する場合は「廃業」にはあたりません。

2:倒産と廃業の違い

企業が“自主的に”事業をやめる廃業に対し、倒産は会社の資金が底をつき事業を“断念せざるを得ない”状況です。

例えば、企業が経済的に破綻してしまい、弁済期にある債務を弁済できなくなり、事業をそのまま続けることが不可能になること、またはそのような恐れがあることを原因として倒産が発生します。

自主的な廃業とは異なり会社債務を完済できない状況であるため、通常の会社清算手続きではなく、事業を再建できる可能性の有無によって、破産(再建可能性がない場合)や民事再生(再建可能性がある場合)といった「倒産手続き」に基づいて債権者に平等に配当を行うことになります。

つまり、廃業は清算手続きを経て企業が消滅するのに対し、民事再生手続きが取られる倒産では企業が消滅するわけではないことに注意が必要です。

3:休業と廃業の違い

休業とは、労使関係を解消せずに事業を休止する状態のことを意味し、特に労使いずれかの事由により従業員の勤務を一時停止することを指します。

企業自体は存続しているという点が廃業との違いです。会社を眠らせた状態にすることから会社の休眠と表現されることもあります。

4:経営破綻と廃業の違い

経営破綻とは、倒産状態の企業を遠回しに表現する手段として用いられる語です。

上述したように、倒産状態の企業には、再建可能性がある企業(民事再生手続きが取られる企業)と、再建可能性がない企業(破産手続きが取られる企業)とが存在します。

しかし、世間一般では「倒産」すなわち、「再建できない・企業が消滅する」といったイメージであるため、再建可能な企業の倒産に対して、マスコミが配慮のために使用し始めたという経緯があります。

廃業する企業が増えている原因8選

企業経営者が、廃業(清算)を選択する背景には以下のような事情が絡むことが多いようです

1:人手不足

少子高齢化に伴って、働く世代の人口(生産年齢人口)が減り、事業に必要な従業員の確保が難しくなっていることが、廃業の背景として挙げられます。

2021年5月の有効求人倍率は1.09倍で求人数が求職者を上回っており、完全失業率も3.0%(同)と低水準で推移。労働者にとって、売り手市場が続いています。

売り手市場にあっては、労働者は、よりよい労働条件の企業に流れがちです。従業員をつなぎとめるための人件費の高騰や採用コストが高騰が発生し、中小企業を中心に経営を圧迫し、資金難により廃業に至るケースが出ています。

出典:職業紹介-都道府県別有効求人倍率|労働政策研究・研修機構

出典:労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)5月分結果|総務省統計局

出典:中小企業、人手不足による廃業が相次ぐ|財経新聞

2:後継者不足

少子高齢化は、次代の企業経営者が見つからないという問題も引き起こしています。後継者が見つからないために事業自体は黒字であっても廃業(清算)せざるを得ない企業は増えつつあります。

中小企業の信用情報などを調査する帝国データバンクによると、経営者が60歳以上の企業では50%超が将来的な廃業を予定しており、そのうち、廃業理由として「後継者難」を挙げるケースが約3割にのぼっています。

後継者を見つけられないまま経営者が高齢になってしまうと、後継候補がみつかったとしても十分な引き継ぎの時間が確保できない状況に陥ってしまい、廃業を選択するケースがあります。

出典:全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)|帝国データバンク

3:業績悪化や市場環境の変化

一般的に競争の激しい、レストランなどの飲食店、旅行会社、ホテル等のサービス業の企業や時代の変化によって需要が低迷する業種は廃業に繋がりやすくなります。このような業種は新型コロナウイルスによる世界的な需要・消費の落ち込みの影響を大きく受けました。

なお、2020年の廃業件数は過去最多を記録しました。中小企業庁の「2021年版 中小企業白書・小規模企業白書」は、廃業の原因について、企業の後継者不足に加え、新型コロナウイルスによる業績悪化が追い打ちとなったと分析しています。

出典:2021年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要|中小企業庁

廃業(清算)のメリット

廃業が増えつつあるのは、廃業を選択することに次のようなメリットが生じるためです。

1:債務の増加を防ぎ、資産を守れる可能性がある

業績が傾きはじめ、底が見えない企業の場合、無理に経営を続けるのは得策ではありません。特にオーナーが個人保証を行うことが多い中小企業などでは、企業の体力があるうちに廃業を選択することで、オーナーの個人資産も守ることができます。

また、会社の資金が底をつき商売することができなくなった倒産よりも、自ら選択した廃業の方が社会的な評価も悪くありません。

2:後継者問題から解放される

廃業により企業は消滅します。したがって当然ながら、廃業すれば後継者問題に頭を抱える必要がなくなります。つまり、人手不足や将来性の不安と言った精神的なストレスから解放されることが廃業のメリットです。

一方で、築き上げてきた企業の廃業をする際には寂しさや空虚さを感じる経営者は少なくありません。

3:経営の責務から解放される

廃業手続きによって企業そのものが消滅するため、今まで経営者として引き受けていた経営の責務から解放されます。

登記、給料管理や給与支払報告書の作成に決算、中間申告や中間納付に年末調整、資金繰りなど煩わしい作業が一切なくなります。

経営の管理や人間関係の問題等からも解放されるというメリットがあります。

廃業(清算)のデメリット

廃業によるデメリットには従業員が失業する、取引先に迷惑がかかることなどがあげられます。

1:従業員が失業する

当然ながら廃業で企業が消滅した結果、従業員は働く場を失うことになります。

長年苦楽をともにした従業員に解雇を通告する経営者にのしかかる精神的ストレスは計り知れません。この精神的ストレスを考えると大きなデメリットと言えます。

2:取引先に迷惑がかかる

廃業する場合、従業員だけでなく仕入先や取引のある企業にも影響が出ます。特に、計画的な廃業ではなく急な廃業となると、取引先やステークホルダーには多大な迷惑がかかります。

従業員に解雇通告をする時と同様、お世話になった取引先に報告する際にも精神的ストレスはのしかかります。

3:ブランド・技術などが消滅する

廃業により、長年にわたり築き上げてきた自社の技術やブランドは消滅してしまいます。長年にわたって厳しい競争をくぐり抜けてきた技術やブランドが引き継がれないことは社会的な損失と言えます。

事業承継型M&Aで廃業を回避できる可能性も

多くの関係者を巻き込む廃業を回避するためび手段のひとつとして、「事業承継型M&A」が挙げられます。

事業承継とは、会社を親族や従業員、他社などの後継者に引き継ぐことです。

後継者としては真っ先に候補になるのは、一般的には企業オーナーの親族や従業員ですが、親族や従業員に相応しい人材がいないケースでもM&A(企業の合併・買収)を用いた事業承継(事業承継型M&A)を選択すれば、廃業を回避することも可能です。

近時、中小企業庁が事業承継型M&Aによる事業の承継者に対して「事業承継補助金」を支給する制度を設けるなど、国が活用を推進している事業承継方法のひとつでもあります。

自社のポテンシャルを引き出すことができる人材に自社の今後を託すことができれば、従業員の雇用維持やステークホルダーへの影響の軽減が可能になります。

企業の売却で譲渡益が発生する点も、廃業する場合に比べ大きなメリットといえます。

ただし、事業承継型M&Aにも相応の期間が必要になるため、なるべく早うちから情報収集をはじめるとよいでしょう。事業承継型M&Aに必要な期間や手続き、他の承継方法との比較は、以下の記事でくわしく解説しています。

参考記事:事業承継型M&Aとは?事業の承継にM&Aを利用するメリットとデメリット、成功のコツ|M&A toZ

なお、事業の承継者はできるだけ多くの候補者から自社に最適な人物・企業を探す必要があります。インターネット上で承継候補を探すことができるM&Aマッチングプラットフォームを活用することで候補者の幅が広がります。

以下の記事のように、自身の引退後を考えはじめた経営者が、M&Aプラットフォーム上での承継先探しを経て、上場企業に経営を引き継ぐケースなどもでています。

参考記事:【ランドコンピュータ×インフリー】社員の将来を見据え、創業社長が下した決断。豊富な受託実績を武器にDXの最前線で戦う2社が、ベストパートナーを見出すまで|M&Aクラウド

廃業を選択する前に会社存続の手段を検討すべき

廃業にもメリットはありますが、負債がある場合は経営者に残ったり従業員や取引先に迷惑がかかったりとデメリットが多いのが廃業の特徴です。「仕方がない」と諦めていても、廃業を回避する方法があります。

会社の廃業を選択する前に、事業承継型M&Aを検討するなど企業存続の道を探ることをおすすめします。

事後業承継M&Aの第一歩として、M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を使って承継者となる買い手企業を、インターネットで探しはじめるとよいでしょう。

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