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子会社を売却するメリットとデメリットを解説。売却の方法と注意すべき点は?


公開日:2021年7月31日  最終更新日:2022年11月18日

子会社の代表的な売却方法には、株式譲渡・会社分割・事業譲渡と3種類あり、それぞれ特徴が異なります。今回は、子会社を売却するメリット・デメリットと会社売却の方法、注意点について詳しくご紹介します。これらを理解した上で注意点を守って実行しましょう。

子会社を売却する3つのメリット

子会社を売却するメリットは次の3つです。

1:売却益、株式譲渡益の獲得

1つ目のメリットは、売却益を獲得できることです。子会社の売却で得た利益を親会社の事業に投入し、事業規模の拡大や経営再建を図れます。

2:採算の取れる分野にリソースを集中できる

2つ目のメリットは、子会社の経営に割いていたリソースを採算の取れる事業に割けるようになることです。赤字の子会社を売却した場合、「1.売却益、株式譲渡益の獲得」で述べた通り、獲得した資金を採算の取れる事業に投入できるだけでなく、これまで不採算事業に投下していたリソースを、より収益力の高い事業に投資できるため、事業が大きく成長することも期待できます。

3:買収側企業とシナジー効果を狙える

これまでの項目が、子会社を売却する企業のメリットだったのに対し、本項目は売却された子会社にとってのメリットです。

子会社が売却先企業の傘下に入ると、シナジー効果(相乗効果)が期待できます。例えば、卸売業者と流通業者が統合すると、流通コストを大幅に削減できるようになり、商品価格を抑えることが可能になります。

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子会社売却の3つのデメリット

続いて、子会社売却のデメリットを3つご紹介します。

1:従業員の離職したり取引先が離れるおそれがある

1つ目のデメリットは、子会社の従業員が離職したり取引先との関係が悪化したりする場合があることです。

従業員は、突然の会社売却に不信感を抱けば、売却が完了する直前や売却直後に離職する場合があります。その結果、買い手が得る人材面のメリットを享受できなくなり、契約内容に変更が生じる可能性も否定できません。

このような事態を防ぐために、適切なタイミングで会社売却の事実を伝え、納得を得られるように説明することが大切です。

さらに、売却手法として事業譲渡を選択した場合、従業員の転籍について個別に同意を得る必要があります。また、会社分割による場合でも労働契約承継法に定められた手続きを経なければならない場合があります。子会社の売却においては非常に重要な論点ですので、必要な対策について専門家に相談することをおすすめします。

参考記事:事業譲渡で企業が注意すべき従業員への対応|従業員の待遇の事例をもとに紹介|M&A to Z

2:事業領域が制限される場合がある

2つ目のデメリットは、競業避止義務により、売却する子会社と同じ事業を同一あるいは隣接する市区町村において今後20年間行えないことです。つまり、子会社の経営で得た知識や技術、ノウハウを元に同一の事業を立ち上げて利益を得ることができません。

もし、これが認められてしまうと、買い手が市場シェアを獲得できなくなり、買収のメリットが大きく失われます。事業領域が制限される旨を踏まえて、売却するかどうか検討しましょう。

3:低額譲渡は寄付金に該当し、課税されることがある

時価よりも低い価額で譲渡することを「低額譲渡」といいます。法人税法37条第7項では、低額譲渡における時価と譲渡対価の差額が寄付金に該当することが定められています。

例えば、P社が子会社であるS社の株式(帳簿価額1,000百万円、時価1,500百万円)をQ社に譲渡したケースを考えてみましょう。

譲渡価格が時価1,500百万円の場合、会計上、P社は1,500百万円-1,000百万円=500百万円の売却益を獲得し、税務上も同額の売却益を認識します。したがって、500百万円に対して法人税等(約30.62%)が課税されます。

ところが、時価よりも低い1,100百万円で譲渡した場合、会計上P社においては売却益が100百万円発生しますが、税務上は時価1,500百万円で譲渡したものとして500百万円の売却益を認識します。さらに、時価1,500百万円と譲渡価格1,100百万円との差額400百万円は買い手に対しての寄付金として取り扱われます。

損金に算入できる寄付金には限度額が定められているため、400百万円の寄付金の一部が損金に算入されず、課税所得に算入されるおそれがあります。このようなデメリットが発生することのないよう、顧問弁護士などに早めに相談することをおすすめします。

子会社を売却する手法

子会社を売却する代表的な手法には、株式譲渡と会社分割、事業譲渡があります。それぞれの特徴を詳しくご紹介します。

1:株式譲渡

子会社売却の方法の中で最もシンプルなのが株式譲渡です。株式を譲渡することで経営権を譲受企業に移転します。また、子会社の株式は全て譲渡することが一般的ですが、一部譲渡も可能です。例えば、連結子会社Aの株式を80%保有している場合、50.1%になるように29.9%分だけを売却することで、連結の範囲内に留めることができます。

株式譲渡は会社法上の組織再編行為に該当しないため、比較的迅速に手続きを進められるという特徴があります。

参考記事:株式譲渡を行うメリット5つ|主な手続きや注意点もあわせて解説|M&A to Z

2:会社分割

子会社の事業の一部を売却したい場合は、会社分割を利用できます。会社分割とは、切り離したい事業を分割承継法人に承継させる会社法上の組織再編行為を指します。子会社の事業の一部を切り出して譲渡できる手法です。

ただし、会社分割の手続は会社法上厳格に定められており、債権者保護手続きなどが求められるため、株式譲渡と比較して時間がかかるというデメリットがあります。

参考記事:事業の選択と集中に使える“会社分割”とは何か?メリット・デメリット、手続きを解説|M&A to Z

3:事業譲渡

子会社が運営する複数の事業のうち、一部の事業だけを売却したい場合は、事業譲渡を利用できます。

事業譲渡は商取引に該当するため、承継する契約や許認可においてそれぞれの同意が必要です。また、会社分割とは違い、課税資産を譲渡した場合には消費税の課税対象になる点にも注意が必要です。

参考記事:事業譲渡とは?事業譲渡の活用シーンと、売り手企業にとっての負担・デメリット|M&A to Z

子会社売却の注意点とは

子会社売却においては、会計処理や税務処理、実務において注意が必要です。子会社売却の際は、次の注意点を守りましょう。

1:会計処理上の注意点

子会社を売却した際の会計処理では、子会社株式(関係会社株式)の簿価と売却額の差額を関係会社株式売却損益として処理します。

例えば、子会社株式の簿価が5億円、売却額が7億円の場合は、次のように処理します。

現預金7億円-子会社株式の簿価5億円=関係会社株式売却益2億円

関係会社株式売却損益は、通常、損益計算書の特別損益として表示します。

また、連結財務諸表を作成する場合、個別財務諸表で計上した関係会社売却益を連結上の売却益に修正する作業が必要となります。当該修正に伴い対応する法人税等の修正が必要となるほか、売却割合によってはのれんの取崩しが必要となるなど、関連する論点が数多く存在することに留意しましょう。

2:税務上の注意点

前提として、子会社売却の際の売却益は課税所得を構成するため、約30.62%の法人税等が課税されます。そのうえで注意すべきこととして、子会社株式評価損が会計上は特別損失である一方で、税法上は損金にならないことがあげられます。

したがって、過年度に関係会社株式評価損を計上していたとしても、当該評価損は税務上の損金に算入されていないため、関係会社株式の税務上の帳簿価額と会計上の帳簿価額が異なっています。この帳簿価額の差異により、子会社株式を売却した際の、税務上と会計上の売却損益にも差異が生じる可能性があることを覚えておきましょう。

参考記事:株式売却(株式譲渡)を考えるなら検討すべき4つの問題とは|税金についても解説|M&A to Z

3:実務上の注意点

M&Aにおいては買い手探し、選定、交渉、デューデリジェンス、最終契約、クロージングと複数のプロセスを踏むことになるため、案件の開始から成約までに1年以上かかることも珍しくありません。売却を検討し始めたら早めに専門家に相談し、売却完了の目安日を定めた上で、現実的なスケジュールを策定することが大切です。

参考記事:M&Aによる会社売却の主な流れ|成功させるポイントや注意点も|M&A to Z

子会社売却を成功させるには

子会社を売却する目的を明確化した上で、メリット・デメリットを把握し、売却するかどうか決定しましょう。

また、売り手企業にとって買い手企業選びは非常に重要です。M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」では、会社を買いたい企業が欲しい企業の要件を記事として公開中です。

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