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「弱者が強者を飲み込む」M&A事例4選


「弱者が強者を飲み込む」

今回はM&A事例の中でもこのフレーズが当てはまる印象的な買収をピックアップして紹介したいと思います。

リンク・インターナショナルの米セオリー買収

リンクインターナショナルは現在ファーストリテイリングの完全子会社となっているリンク・セオリー・ジャパンの旧商号です。1997年アメリカで設立されたコンテンポラリーな婦人服ブランド「Theory」をリンク・インターナショナルは1999年に輸入開始、2000年に米セオリーグループとライセンス契約を締結していました。

そのセオリーブランドを2003年9月、リンク・インターナショナルはファーストリテイリングと共同出資により、米セオリーグループの買収を行いました。この買収のスキームは、リンク・インターナショナル(44.5%)とファーストリテイリング(44.5%)、さらにセオリー代表のアンドリュー・ローゼン氏(11%)でL&F Holdingsを設立し、米セオリー株式を1億ドルで全部取得しました。この買収資金としてリンク・インターナショナルは第三者割り当て増資によりファーストリテイリングから出資金67億円調達しています。

同時にファーストリテイリングの所有するL&F Holdingsの株式を全てリンク・インターナショナルに譲渡。これによりリンク・インターナショナルの保有するL&F Holdings株式は89%となり、米セオリーグループは実質リンクインターナショナルの子会社になりました。また、この買収をファーストリテイリングが単独でせず、共同出資を選択した理由として、子会社のユニクロのもつ低価格イメージがセオリーブランドに悪影響が出ることを懸念したためと考えられています。

リンク・セオリー・ジャパンが米セオリー本社を買収するまで

富士フィルムの米ゼロックス買収

直近で見られた事例では2018年1月30日、米事務機器大手ゼロックスが富士フィルムホールディングスとの合併会社「富士ゼロックス」と経営統合することで調整に入ったと報告されました。また統合後の新富士ゼロックスCEOには現米ゼロックスCEOのジェフ・ジャコブソンが就任予定です。

背景として、米ゼロックスは米国でのコピー機の需要低下による業績悪化から抜け出せず、今後の業績回復が不透明であったということがあり、コピー機需要が今後も見込める中国などアジア・太平洋地域をかかえる富士ゼロックスと一体になることで、世界での規模拡大を目指すという狙いがあります。

一方富士ゼロックス側は、欧米市場を取り込めばコピー機増産、世界でのシェア拡大が見込めるなどの利点があるとの考えです。

今回の買収に際して大きな存在となっているのが、筆頭株主のカール・アイカーン氏と3位株主ダーウィン・ディーソンの連携です。米ゼロックス株の計約15%を持つ彼らは1月22日にCEOの解任や戦略見直しを求める書簡を送付するなど経営陣に圧力を強めていました。これには、アイカーン氏がかつて経営破綻したイーストマン・コダックの二の舞を避ける狙いがあると言われています。

ゼロックスは、今回の買収スキームのなかで富士フィルムHDによるゼロックスの買収に反対されないよう、既存株主に25億米ドル(約2750億円)を特別配当すると発表しており、これにより彼ら筆頭株主は約415億円のキャッシュを手にすると言われています。しかし現在富士フィルムによる米ゼロックスの買収が進んでいることに対してアイカーン氏は反対しています。彼は公開書簡のなかで富士フィルムが自社の現金を全く使わない買収スキームを批判、さらに株主に支払われる特別配当は「我々の資産から支払われる」と米ゼロックスの資産を取り崩す仕組みにも批判しています。(2018年2月13日現在)

富士フィルム、1円のキャッシュアウトもなく米ゼロックスを買収

セブンイレブン・ジャパンの米セブン買収

セブンイレブンは当初アメリカ・サウスランド州で生まれました。イトーヨーカ堂で新規事業計画の部署の責任者であった鈴木敏文氏らは、1973年セブンイレブンのライセンス契約を取得し、株式会社ヨークセブンを設立しました。日本でのセブンイレブン第一号店は豊洲でオープンされ商号はセブンイレブン・ジャパンに変更されました。

1980年代に米セブンイレブンが業績不振に陥り、1991年米セブンイレブン本社であるサウスランド社が経営破綻したことによりセブンイレブン・ジャパンはイトーヨーカ堂と共同で買収、社名は「7-Eleven,Inc」に変更、子会社化し日本流のコンビニ商品管理システムを導入することによって立て直しました。

2005年9月には7-Eleven,Incの完全子会社化を決定、TOBを実施。買収価格は約10億ドル(約1100億円)、セブンイレブン・ジャパン直接の完全子会社となっています。

セブンイレブン・ジャパンが米セブン本社を買収するまで

ライブドアのニッポン放送敵対的買収

もともとニッポン放送はフジテレビの親会社でしたが、時価総額がフジテレビのほうが高くなったためニッポン放送の株を誰かに買い占められ、ニッポン放送の大株主になられることを懸念し、フジテレビを親会社とするTOBを行いました。この最中にライブドアがニッポン放送の株を買い集め、最大の株主となってしまいました。

ライブドアの狙いはフジテレビの経営権を取得することでした。フジテレビより株価の安価なニッポン放送の経営権を握れば子会社であるフジテレビの経営に関われるというものでした。

これに対しフジテレビ側は、新株予約権を発行し持ち株比率をあげることによりライブドアの影響力を排除しようとしましたが、ライブドア側がこの発行を裁判所に訴え、新株予約権の発行は差しどめ。この後フジテレビ側はニッポン放送の有するフジテレビ株をホワイトナイトとして名乗りを上げたCEO北尾吉孝氏率いるSBI(ソフトバンク・インベストメント)に5年間貸株を決断、ニッポン放送のフジテレビに対する議決権をSBIに移しライブドアの狙いを防ぎました。

最終的にフジテレビとライブドアは和解しましたが、まさに新興企業であったライブドアがニッポン放送さらにはフジテレビまで飲み込もうとした事例となりました。この事例では子会社が親会社よりも時価総額が高くなった場合のリスクが顕著に現れたと言えるでしょう。

ライター:M&Aクラウドリサーチャー 豊福ジャン