faceノウハウ

東証マザーズを目指すスタートアップに向けて(後半)


前項に続いて今回の記事では、企業それ自体の規模を株式の調達金額や、時価総額から分析し、将来的な期待値を示す。そしてその資金を運転する裁量がどれだけ経営者に用意されているのか、上場によって各会社の従業員に割り当てられる報酬も見ていく。

資金調達額

資金調達額の順位を上位から順番に見ていく。一位の HANA Tour Japanは貸切バスや契約ホテルを運用して観光事業を行っているため運転資金がかなり多い印象である。さらに上場以前にも大規模な資産を保有し、安定した成長を続けていたことから注目が集まっていると言える。次のPKSHA Technologyは人工知能技術分野のアルゴリズムのライセンスを販売しており、近年注目されるAI開発のトップランナーであることから他者に比して潤沢な資金を調達できたことは自然な流れだと言える。さらに株主から当社に向けられる期待は突出していて、後述する時価総額、PERにおいても上位に位置付けている。三位のウェルビーは障害者就労移行支援を行なっている。政府の法制度改革も手伝って、今後さらなる事業規模の拡大が予想される。

最下位のWantedlyは上場時点で資金を調達する必要があまりなく、さらに調達した資金の投資先も不明瞭であることから上記のような位置となった。そもそも未上場時の方が株価が高く、さらに上場をして低い株価で株式を発行してしまうと既存投資家(株式保有率の過半数は会社役員)が損失を被ってしまうため株式での調達を見送ったようだ。今後事業拡大の目処がたった場合に大規模な株式増資をすることが明らかとなる数字であった。そして次の二社は人材関係の会社が並んだ。二社ともすでにある程度は自社の事業を行うプラットフォームが充実しており、収益が安定しているため、今後の事業の拡大は緩やかなものであると見込まれる。

中央値と平均値にはかなりの乖離が見られ一部の企業は数十億円を超える資金を調達しているが、その他の多くの企業はおよそ十億円程度に落ち着いているようだ。

PER

続いては公開価格のPERについて述べる。一位のシェアリングテクノロジーは社名上、シェリングテクノロジーに似た語感を持つことから、同ビジネスモデルに期待を寄せる投資家の注目を集めた可能性がある。また、実際のところバーティカルメディアの運営を行う同社のビジネスモデルはつい先日東証一部上場を果たした株式会社じげんと類似するものであったため、同じようにPERが跳ね上がったものだとも説明できる。二位のPKSHA Technologyは上述した通り、期待値がかなり高い企業と言って良い。売上の成長率も安定しており、今後も高成長高PERを記録し続けるものと思われる。クックビズも同様に会計前年度の当期純利益が他社に比べて低かったため、平均的な時価総額であるにもかかわらず、高PERを記録した。

下位の企業にも同様のことが言える。ユニフォームネクストは企業に対する制服の販売を行なっている会社である、当該領域の成長性には投資家からやや疑問が投げかけられ、低PERを記録することとなった。また、グローバルリンクマネジメントは投資用マンションなどの不動産運用を行なっている。こちらも爆発的な成長が期待できる領域ではないことから、不動産領域全体に関してPERは落ち着いた。三位のエスユーエスはHR事業を行う会社であり、安定した成長を続けている。

PERの平均値に関しては上位の数社が全体の値の底上げをしている形で40を超える値を記録しているが、中央値を見てみると平均的な上場企業よりも少し高い程度の値を取るにとどまっている。

上場時の時価総額

上記二項目から連続して、時価総額においてもPKSHA Technologyがランクインした。ビジネス分野において一番熱いと言っても良い人工知能分野に参入している同社は同社に対する株主の期待と将来的な事業規模を考えると納得がいく。次点のウェルビーは事業規模、将来性に関して明るいことに加えCSRの観点からも評価が高いと言える。三位のマネーフォワードは公開時の経常利益、当期純利益こそ少なかったものの、売上成長率、PER共にかなり高位に位置付けていることから多くの株主の期待を集めることとなり、時価総額においては三位につけた。下位に目を向けるとみらいワークスとLTSが資金調達額のランキングと同様にランクインした。二社はすでにHR関連事業が収益基盤として完成しつつあり、それ自体と新規事業がどこまでスケールできるかが鍵となるため時価総額に関しては落ち着く結果となった。二位のビーブレイクシステムズはソフトウェアを用いた統合的ビジネスソリューションの提供を行なっている。順調に売り上げを伸ばしているが、爆発的な増加は見られない。

平均値は十億円程度、中央値は五億円程度であることから上位の企業が全体の底上げをしていると言える。特に上位十社までの時価総額が高いものとなっているが、その他の企業は中央値付近に集中する結果となった。全体を概観してみると、継続して安定した収益を上げている企業や、設立以来急激な成長をしている企業が時価総額上位につけていた。頻出する業界はやはり、テクノロジー系やIT系のが目立った。

代表取締役の持株比率

代表取締役の持ち株比率に関しては上記のような結果となった。Wantedly、みらいワークスは以前のランキングでも同じような位置につけていた。個人的リターンと経営の自由度がかなり高い会社であると言える。対して下位の三者はいずれも親会社を持つ会社であり、それが同社の筆頭株主になっている。どの企業も自社内の取締役員の持株比率を合計すると大方五割を超えるものとなっていて、自社の経営方針を握っている。また、本項目は独立した会社と子会社がランダムにサンプルとして抽出されたランキングであるにもかかわらず、平均値と中央値が持株比率の三分の一をわずかに超える値となっており、経営方針の拒否権を握れる条件を満たしているのは興味深いものである。

全体を概観してみると、経営者の大きな裁量に基づいて上場した会社や、長期にわたって収益を積み上げてきた会社の経営者持株比率は比較的高いようだ。

従業員の持ち株比率(ストックオプション比率)

ストックオプションに関してはこれまで低位につけていたLTSが二位を大きく離して一位につけた。二位にはマネーフォワードが位置し、時価総額を考えるとかなりの金額が従業員に還元されたと言える。三位にはみらいワークスがつけた。対して、下位には今まで多くのランキングで上位につけていたHANA Tour Japanが最下位となった。同社の株式はほぼ全て親会社に保有されていることを考えると従業員には別の方法で利益還元がなされているはずだ。また二位と三位のにはウェルビー、Wantedlyがつけている。この二社は先のランキングで代表取締役の持ち株比率が非常に大きい結果となったため、株式を通じた従業員への利益還元度は比較的低いようである。

今回のランキングでは平均値と中央値に大きな乖離は見られず、ほぼ8%に落ち着いた。

ライター:M&Aクラウドリサーチャー 市瀬凛