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伝説のM&A、Google によるYouTubeのM&Aを改めて考察


1.案件概要

1-1.買収形態・買収年月

 1-2.Google の株価チャート

1-3.タイムライン

2.前置き

本題のGoogleによるYouTubeの買収をひも解くにあったって2つ知っておくべきことがある。まず、一つ目は当時スタートアップであったYouTubeに対してGoogleは16.5億ドル(約2000億円)を株式譲渡で買収していることだ。理由としてはYouTubeの株主に税金がかからないようにするためだったとGoogle社主席法律顧問は述べている。そして二つ目はYouTubeは売却後もGoogleとは別のサービスとして名前、従業員67人そして社長ともに会社に存続していることだ。Google以外にもYouTubeの買収を狙っていた会社はYahoo, Microsoft, News Corp.などであった。

2-1.Googleのビジネスモデル

Googleといえば検索エンジンという印象が強いが、その他にも2018年6月の時点で約110のサービスを提供している。以下はその中でも代表的なものであるが、いくつ知っているだろうか。

Googleのビジネスモデルは2つターゲットラインがあり、1つは一般ユーザーに対してのB2Cビジネス、もう一つがB2Bの事業・広告主に対してのビジネスである。無料ユーザーが行動パターン、優先傾向、検索履歴などのデータをGoogle上で共有することによって、広告主がターゲットを絞って一般人に対して効率的な広告を表示できるようになっている。

テレビがスポンサーからお金をもらっているのと同じ要領で、分析結果、サービスに対して料金をチャージするというビジネスモデルだ。Googleの主な収益は赤で囲ってあるサービス、ひとつはグーグルアドセンス(所有するコンテンツにコードを張り付けることにより広告が表示され、クリックされることにより報酬が支払られる)、そしてもう一つはアドワーズ(広告主向けの広告出稿サービス)である。

2-2.広告売上の割合

これは2005年から2017年までオンライン広告での収益の内訳である。近年になってPixelなどの関連プロダクトを生産するようになったが、YouTubeを買収した2006年には99%の収益が広告料であった。この表により当時のGoogleは新しい広告媒体の確保・強化に特に力を入れていたことが伺える。

3.Googleによる買収の目的

YouTubeが設立されてから1年8ヶ月、2005年10月に買収が発表された。そして11月にGoogleにとって当時最大規模の額16.5億ドル(約2000億円)で買収している。当時CEOのエリック・シュミット(現アルファベット社執行会長)はこの買収に関して「次世代のインターネット革命へ」と述べている。この言葉の背景に「市場占有率の確保」「競争力の向上」「コミュニティの作成」があげられる。

3-1.市場占有率の確保

オンラインビデオ市場占有率(2006年度)

Googleは元々Google VideoというYouTubeに似たサービスを自社開発していた。だが、そのR&Dコスト削減、そして市場占有率を確保するために、YouTubeの買収計画に取り掛かった(まだサービスを始めて間もない頃であったが、2006年の夏にはWorld Wide Webによって最も成長せいの速い企業に選ばれている。)ちなみに合併の際にYouTubeとGoogle Videoの位置関係に対してどうしていくかという質問に対して、CEOは両サービスを維持していく方向性を示していたが、実際のところ、同じサービスを維持し続ける必要はないので2015にGoogle Videoのサービスを停止している。(現在のGoogle Videoは動画検索専用サイトである)

3-2.競争力の向上

YahooやMicrosoftなどのオンライン検索エンジン、従来の広告会社、そしてユーザーのエンゲージメントを高めるという観点からその他のインターネットサービスプロバイダーなどが競合として挙げられる。広告収入の大元となる一般ユーザーのベース規模の拡大・新たな広告媒体を確立するためYouTubeの買収に取り掛かった。従来の検索エンジンなどを通しての広告収入だけでなく、新規層のユーザーを取り囲むため目的であったと考えられる。その結果、広告主のターゲット層強化そしてユーザー情報を分析するツールを提供できるようになった。

3-3.コミュニティの作成

最後にコミュニティ作成および強化があげられる。コミュニティの作成の背景としてはもちろんGoogleの顧客ベースを拡大させることである。上記で軽く触れたがGoogleの顧客ベースは一般ユーザー(広告主の顧客)、事業(コンテンツクリエーター)、そして広告主(Googleの顧客)である。既存の事業をシステム化することによって新しいニーズを生み出し新規顧客の開拓を図った。つまり無料でサービス提供することにより一般ユーザーが見たがるチャネルをコンテンツクリエーター(YouTuber)に作ってもらい、YouTuberに報酬として還元することによって、需要が増え、最終的に広告主を増やすことができたのである。

3-4.ターゲット別Googleの経営戦略

 

YouTubeの基本的機能である情報配信、シェア、コメント、そしてブログやSNSへの挿入機能などにより、情報の売り手と受け手が相互に情報をやり取りできるようになっていることもユーザーを増やす一因になった。

4.YouTubeはなぜ買収に賛同したか

YouTubeの創業者、スティーブンとチャッドはインタビューにて「Googleほど技術面においても職場環境においても合う会社はない」と述べている。だが、私が思うにはまず、事業拡大のための資金がなかったこと、そして著作権侵害に対する訴訟への懸念からキャッシュフローが安定しているGoogleに売却することにしたのではないかと思う。オンラインビデオ事業を拡大するためには、かなりの開発費そして、帯域幅(通信速度)の改善にコストがかかる。(もちろん10年前は今の何倍もお金がかかった。)

YouTubeも資金調達は完了していたが、その成長率とトラフィックから見ると思いのほかのニーズの伸びに資金面が間に合っていなかった。そのためGoogleの安定した資金力により動画を利用した広告と視聴者のニーズに合った事業拡大に集中できるようになった。また、その他にもYouTubeはその著作権に関する問題を抱えていた。そのためコンテンツクリエーターから訴訟され、巨額な賠償金が発生する可能性から、Googleの交渉力によっての法務関連問題の終結そして新しく著作権侵害を阻止する新たなシステムを期待し事業売却をしたのだと思われる。

Sage Journals「新規YouTube動画ユーザー伸び率」より

5.YouTubeGoogleのシナジー

5-1.コストシナジー

上記で挙げたようにサービスを向上するためにはYouTube、Googleともに早い通信解析速度が必要である。Google検索結果のスピードをあげることそして動画のクオリティを高めることに関して言えばMbps (Megabits per second)「一秒に伝えることができるデータ量を表している数値」を上げる必要があった。両社の研究・開発を合併することによりコストの削減ができたといえる。

5-2.売上シナジー

Sergey Brin、Googleの開発者の一人は「ビデオは広告の媒体として優れている」と述べている。Googleは検索結果に対価する広告を売っているが、YouTubeとの売上相乗効果は期待値を上回ったのではないかと思う。2016年にはYouTubeはオンラインビデオ事業では1位、そして全世界で5番目に最もアクセス数の多いウェブサイトであった。eMarketerによると2016年度にはビデオ広告単体で520億ドルの売り上げを達成したと述べている。

5-3.市場規模拡大シナジー

またGoogleの買収の目的の一つとして挙げたが、今回の買収によって過半数以上のオンラインビデオ業界を占有している。また下のグラフは2016年度におけるオンラインビデオ市場占有率を表しているが、YouTubeは78.8%を占めている。このことはGoogleにとって、とても重要なことであり、Google (Google Videoを含む)から検索したビデオのほとんどがYouTubeであるため市場操作しやすくなった。

2016年度オンラインビデオ市場占有率

6.備考

GoogleとYouTubeの案件に関しては10月にその買収が発表されてから約1ヶ月ほどで取引が完了している。2009年のインタビューにて現Alphabet株式会社執行会長のエリック・シュミットはYouTubeの買収金額にて、こう述べている。

「YouTubeは当時ほぼ売り上げもなかったが、その成長率に関してはGoogle Videoも含めた競合企業の中でダントツに早かった。YouTubeの企業価値はDCF法などのバリュエーションを使ったのではなく、将来GoogleがYouTubeの成功に確実に関わることのできる額、最終的にその額が16.5億ドルだったというだけだ。それでなければ、YouTubeの現段階での企業価値は700万ドルほどだろう。」- Yahooなどのほかの企業もYouTubeの買収を狙っていたため、本来の価格より競り上がったと考えられる。

少なくない数の専門家たちはこの買収に関して批判の声を上げていたがその中でも、肯定的にYouTube買収を見ていたアナリストたちもいる。スタンフォードグループのアナリストであったクレイトン・モーレンによると「まだ収益もあげていないYouTubeに関してかなりプレミアム価格を払ったと考えられるが、SNS、オンラインビデオなどの成長率を見ると当時テキストベースの広告に頼っていたGoogleは少しアグレッシブにならざるを得なかった」と言っている。これはテキストベースの広告にビデオ広告の強みを付け加えることによってSNSを通してのビデオ広告ができるからだろう。そしてマーティン・パイコネンも同様に買収金額に納得している。「Googleはまだ結果を見ないうちからビデオ検索に関して豪語しているが、あながち間違いではなく広告主もビデオ広告に対してプレミアム金額を払うだろう。」と述べている。