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MicrosoftのM&A総まとめ。時価総額首位に返り咲いたM&A戦略とは


2018年10月15日、Microsoftの共同創業者であるポール・アレン氏が亡くなりました。ビル・ゲイツ氏と共にMicrosoftを率いたアレン氏は、OSの代表格であるWindowsをはじめとして、WordやExcelなどのアプリケーションによってパソコン市場を切り開き、Microsoftの覇権を築きあげました。

2018年11月30日、Microsoftは16年ぶりにAppleを抜き、8,510億ドル(約96兆7,000億円)で時価総額首位奪還を果たしました。Microsoftはサティア・ナデラCEOのもとで再び成長し続けています。

後記:2019年4月、Microsoftの時価総額は1兆ドル(約116兆円)を突破し、Apple、Amazonに続き、米企業史上3番目の1兆ドル超え企業となりました。2020年4月末現在、Microsoftの時価総額は1兆3,590億ドルで米国企業首位、2位は1兆2,855億ドルのApple。

今回、Microsoftの成長には欠かせない『M&A』に焦点を当て、過去の買収事例買収戦略を振り返りたいと思います。また以前の「AmazonのM&A総まとめ」同様、公開ダウンロード資料として、Microsoftの過去のM&A(2000年~2018年)を時系列でリスト化した「MicrosoftのM&A総まとめシート」を掲載しています。

Microsoftの沿革

友人同士の起業から20年で世界的OSメーカーへ

Microsoftは1975年、ポール・アレン氏と学生時代の友人であるビル・ゲイツ氏によって、ニューメキシコ州のアルバカーキで設立されました(法人化は1981年)。

当時ポール・アレン氏とビル・ゲイツ氏は、マイクロコンピュータの製造会社MITSに電話をかけ、「インタプリタ(プログラミング言語で書かれたソースコードを2進数の命令に逐次変換するプログラム)の実装のデモンストレーションをしたい」と提案。これに向けてインタプリタを開発したのがMicrosoftの始まりだと言われています。当初ビル・ゲイツ氏はハーバード大学に通っていましたが、学期期間中にアルバカーキへ戻り、インタプリタの改良などを手伝ったとされています。

1979年、ニューメキシコ州のアルバカーキからワシントン州のベルビューに移転し、ビル・ゲイツ氏の次のCEOになるスティーブ・バルマー氏も入社しました。1981年にはMicrosoft社として法人化します。同年にMicrosoftがIBMのパソコン用オペレーティングシステムを開発する契約を結び、MS-DOS1.0を採用したパーソナルコンピュータを作りました

1986年には本社をワシントン州ベルモントに移し、株式公開。 1995年にはMicrosoftブームの火付け役となる「Microsoft Office 95」が世界で発売開始されました。これは発売後4日間で100万本以上を売り上げました。

1998年にビル・ゲイツ氏は会長兼CEOとなり、スティーブ・バルマー氏が社長となりました。2000年代以降はTabletやXboxなど数々の製品を発表しました。2014年にはスティーブ・バルマー氏からサティア・ナデラ氏へとCEOが代わっています。

90年代後半から時価総額トップ5をキープ

Think 180 around調べ

Microsoftは世界で唯一、20年間にわたり時価総額のトップ5に居続けている企業です。90年代後半でいえばトップ5には日本のNTTや石油会社が入っており、この頃GoogleやFacebookはまだ存在していません。2007年にはGEやシティグループが入っていました。

■ 時価総額
「株価×発行済株式数」で算出され、企業価値を示す指標の一つ。市場の期待値が反映されるため、決算発表などを受けて大きく変動することがあります。


近年の株価については、2014年にサティア・ナデラ氏がCEOに就任して以来、Microsoft株は右肩上がりで伸び続けています。

参考:Microsoftと同じく時価総額ランキングに名を連ねるAmazon、Google、FacebookのM&A戦略に興味のある方は、以下の記事も併せてお読みください。

MicrosoftのM&A戦略

そんな急成長を見せているMicrosoftのM&Aは、CEOそれぞれによって傾向や戦略も違います。今回は2000年に就任したスティーブ・バルマー氏と2014年に就任したサティア・ナデラ氏の2者のM&A戦略について考察したいと思います。

■ Microsoft社のCEO
1975~2000年 ビル・ゲイツ氏
2000~2014年 スティーブ・バルマー氏
2014年~現在  サティア・ナデラ氏

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スティーブ・バルマーのM&A戦略(2000~2014年)

ロイターより引用・編集

2000年にCEOに就任したスティーブ・バルマー氏の時代、Microsoftは約100社買収しており、約240億ドルを費やしました。そのうち70億ドルはNokia、85億ドルはSkypeの買収に使っています。この2件については、後の個別企業の買収事例でも見ていきます。

スティーブ・バルマー時代の13年間に行われたMicrosoftのM&Aは、買収時のバリュエーションを回収できていないという意味において、失敗であったと見られているものが多いです。SkypeやNokiaに加えて、Yammerなどもその事例に当てはまります。また、Googleへの対抗策として買収した「aQuantive」というオンライン広告企業の買収には60億ドル(約7,000億円)費やしていますが、完全に失敗だったといわれています。

参考:グーグルに対抗 米マイクロソフトがネット広告大手アクアンティブを買収

M&Aについて、バルマー氏は2007年に「今後5年間において、5,000万ドルから50億ドルの範囲で年間20社前後買収していく」と積極的な姿勢を見せていました。M&A戦略としては、「オープンソースソフトウェアを活用する小さな企業を積極的に買収していく」と述べていました。

Microsoft社自体の業績は、バルマー氏がCEOを務めていた13年の間にスマートフォンが発売されたことでWindows PCの出荷成長率が伸び悩み、タブレットのOSもiPhoneとAndroidにほぼ二分されるなど、同社にとって苦難の時期となりました。株価に関しても、図で示しているように、14年間で大きく伸びる機会はありませんでした。

サティア・ナデラのM&A戦略(2014年~)

ロイターより引用・編集

サティア・ナデラ氏がCEOに就任した2014年から4年ほどの間に、Microsoftは約45社を買収しています。

買収の特徴としては、 大型のM&Aを積極的に仕掛けていることが挙げられます。2014年9月にはMinecraftを運営するMojangを25億ドル(3,000億円)で、2016年にはLinkedinを過去最高額の262億ドル(約2兆9,800億円)で、そして2018年にはGitHubを75億ドル(約8,300億円)で買収しています。

ナデラ氏は、買収に際して重視する共通項として、 「コミュニティ」の獲得に力を入れていると述べています。Minecraftの買収では「プレイヤー」、Linkedinの買収では「プロフェッショナル」、そしてGitHubの買収では「開発者」の各コミュニティを取りに行っているということです。M&A戦略について、CFOのフッド氏は「私たちはネットワークの市場、成長している市場、そして私たちがオーナーになれる場所を探しています」とも述べています。

2014年以降、株価も急成長を見せ、ナデラCEOは見事にMicrosoftを復活させています。

Microsoftの代表的なM&A、7事例を考察

ここからはMicrosoftの代表的なM&Aとして7つの事例をピックアップし、個別に考察していきます。

Forethought買収(1987年)

まずは、Microsoftが最初に手掛けたM&Aとして、1987年のForethought買収を取り上げます。Forethoughtは、今ではMicrosoftの看板ソフトともいえる『PowerPoint』を開発した企業です。現在、PowerPointは世界10億台以上のコンピューターに搭載されており、Forethoughtの買収はMicrosoftの買収のなかでも最も高い利益を出している成功事例の1つです。

Microsoftが買収を名乗り出た際、Fourthoughtは一度これを拒否しました。6ヶ月の交渉の末、Microsoftは当初の3倍の額である1,400万ドルを掲示し、買収が決まったといわれています。

ビル・ゲイツ氏は当初、Forethoughtの買収に乗り気ではなかったそうですが、側近や執行役員からの説得により買収を決めたといわれています。もし買収をしなかったら、1993年には既に年間1億ドルを稼ぎ出すこのソフトウェアをみすみす逃していたかもしれません。

Skype買収(2011年、約7,700億円)

2011年、Microsoftはネット電話最大手のSkypeを85億ドル(約7,700億円)と史上最高額で買収しました。Skypeは月間利用者数が1億7,000万人に達しており、世界で最も普及しているインターネット電話です。Microsoftによる買収以前はルクセンブルクに本社を置くSkype Technologyとして運営されていました。

この買収は、特に金額面で割高であるなど議論を集めていましたが、現時点でもSkypeの買収は成功とはなっていないように思われます。Skypeは、2010年の時点で10億ダウンロードを突破したものの、2016年時点のアクティブユーザー数は3億人となっており、世界のメッセージアプリの中では第5位となりました。

2018年時点では、1位のWhatsAppが9億人、2位のQQが8億6,000万人、3位のFacebook Messengerが8億人と、アクティブユーザー数は大きく離されています。これら代替アプリの登場に加えて、SkypeのUIが悪かったことや、スマホ対応が遅れたことなどが、アクティブユーザー数を確保できなかった原因と考えられています。

Yammer買収(2012年、約950億円)

2012年6月、Microsoftは創立4年の企業版Twitter「Yammer」を12億ドル(約950億円)で買収したことを発表しました。Yammerは2008年9月にリリースされたエンタープライズ向けソーシャル・ネットワーク・サービスです。不特定多数にメッセージが公開されるTwitterとは違い、組織内や組織のメンバー、指名されたグループの間でプライベートなコミュニケーションを取るために利用されています。

2016年9月には、MicrosoftはYammerをOffice365 Groupsに統合すると発表。この統合によってYammerの単独提供はストップし、Office365ユーザーはYammerの全機能が利用できるようになりました。ただ、近年はSlackの台頭により苦戦を強いられています。

Nokia買収(2013年、約5,300億円)

2013年9月、Microsoftは世界最大の携帯電話メーカーであるフィンランドNokia社の携帯電話およびサービス事業を54億4,200万ドル(約5,300億円)で買収しました。2013年通年での携帯端末市場シェアでは、Nokiaは韓国Samsungに次いで2位となっており、2億5,100万台を出荷しています。

この買収で、Microsoftは世界2位の携帯端末メーカーとなりました。しかし、サティア・ナデラ氏が就任して以降は、携帯電話事業からはほぼ撤退しています。

Mojang買収(2014年、約2,680億円)

2014年9月、Microsoftは、多数のプラットフォームでの展開を経て、世界中で人気を得たサンドボックスゲームMinecraft(マインクラフト)」を運営するMojangを25億ドル(約2,680億円)で買収しました。

Mojangは、通称“Notch”ことマルクス・ペルソン氏が創業したスウェーデンのゲーム会社です。ぺルソン氏は7歳からゲーム開発に興味を持ち、ゲームの投稿大会に入賞するなど、Mojang社を創業する前から熱心にゲームの開発・投稿を続けてきたことで有名です。

今回の買収に際して特に反響を呼んだのは、ペルソン氏を含めた役員3名が売却直後に会社を離れるという決断をしたことです。この売却により13億ドル(1,500億円)を手にしたペルソン氏ですが、Twitterや取材を通して「全てを得たことによってモチベーションが無くなった」「億万長者になったことを後悔している。幸せではない」とコメントしています。

Linkedin買収(2016年、約2兆9,807億円)

2016年6月、Microsoftはこれまでの最高額である262億ドル(約2兆9,807億円)Linkedinを買収することを発表しました。Linkedinは、2003年5月に開設されたビジネスプロフェッショナルに特化したSNSです。ユーザー数は世界で4億3,300万人、有料ユーザーは200万人に上っています。

買収時のLinkedinは、売上約30億ドル(約3,300億円)に対して、1.6億ドル(約180億円)の赤字を出していました。Linkedin買収に際して、サティア・ナデラCEOは、Linkedinの経営はMicrosoftからは独立した形で行っていくと明言しています。

また、この買収の意義として、MicrosoftがOfficeやDynamicsユーザーに対して提供できていなかった重要な部分をLinkedinが押さえていると捉えていることも、社内向けメモを通して述べています。

GitHub買収(2018年、約8,300億円)

2018年6月、MicrosoftによるGitHub買収が行われました。買収価格は75億ドル(約8,300億円)となっています。GitHubはソフトウェア開発のプラットフォームであり、ソースコードをホスティングすることで複数人のソフトウェア開発者と協働して開発を行うことができるサービスです。

Microsoftは、現CEOのサティア・ナデラ氏が就任して以来、Officeシリーズのオープンソース化を行っており、オープンソース化の流れは現在のトレンドとなっています。GitHubの買収も、この流れを反映したものといえるでしょう。

今回の買収に際し、ナデラCEOは「わたしたちはユーザーに対しての責任を果たすことを約束します。GitHubのコミュニティは開発者を最優先する姿勢を貫き、独立性を保ちながらオープンなプラットフォームであり続けます」と述べていることから、買収後もGitHubの独立性を維持することが予測されます。

サティア・ナデラCEO体制で今後も成長が期待

2018年6月期のMicrosoftの通期決算では、売上高が過去最高の1,103億ドル(12兆円)となり、営業利益も過去最高の350億ドルとなっています。営業利益は前年比で57%成長しているなど、Microsoftは驚異的に業績を伸ばしています。

ナデラCEOは、これまでMicrosoftが重視し続けてきたWindows OSへの依存から脱却してクラウド事業に注力したことや、これまでのカルチャーを一新しイノベーションを加速させたことなどで、多くの賞賛を浴びています。ナデラCEO体制下で、Microsoftは 「コミュニティ」を取りにいくM&A戦略を活用しながらも、ますますオープンイノベーション化を図ると考えられ、今後の成長にも注目したいです。

ライター:豊福ジャン(M&Aクラウドリサーチャー)日本証券アナリスト協会検定会員補

下記リンクより「MicrosoftのM&A総まとめシート」がダウンロードできます。

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