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国内スタートアップM&A総まとめ-過去5年の売却価格TOP10-


2011年より、後継者問題及びスタートアップのイグジットとして増加し続けているM&Aですが、2018年の総まとめとして、過去5年間の国内スタートアップ企業のM&Aディールを売却価格が大きいものをトップ10としてまとめました。企業の選出条件としては売却価格と取得比率が公開されているものに限定しています。ダウンロード資料として2013年~2018年の国内M&A案件を売却価格順にまとめた資料を記事の最後に掲載しています。弊社サービス『M&Aクラウド』に無料会員登録をすることでダウンロードできます。資料項目にある「創業者ブランド」による格付けは完全に独断と偏見で行なっていますのでご了承ください。

10位 ユナイテッドによるトライフォート買収

10位は2018年9月に行われた、ユナイテッドによるスマホ向けアプリの開発・運営を行うトライフォートの買収です。トライフォートは2012年8月の創業です。ユナイテッドは同社を36億円、取得比率75%で子会社化しました。トライフォートはこれまでスマホ向けアプリやWebアプリを展開し、多数のヒットタイトルを生み出してきました。同社は自社でアプリの企画開発を行うパブリッシング事業に加え、他社保有のIPを活用し共同開発を行うアライアンスアプリ事業、委託により開発を行う受託開発事業を組み合わせることで安定した成長をしてきました。今回の買収に関してユナイテッドは経験豊富な開発組織、優秀な経営人材をグループとすること、またゲーム事業のポートフォリオを強化するという点を期待していると述べています。ちなみにトライフォート創業者の大竹氏は新卒でサイバーエージェントに就職し、その後早稲田MBA、Speeeで経営企画担当役員を勤めた後トライフォートを創業しています。

参考・引用:株式会社トライフォートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ ユナイテッドがトライフォートを36億円で買収 大竹慎太郎氏やWiL Fund、LINEなどから75%にあたる230万株を取得

9位 グリーによる3ミニッツ買収

9位は2017年2月に発表されたGREEによる女性向け動画メディアなどを運営する3ミニッツの買収です。2014年に設立された同社をGREEは43億円+アーンアウトで買収することを発表しています。アーンアウトの内容としては、買収後3年間の決算数値に応じた追加代金を43億円に上乗せして支払うというものです。グリーは今回の件に関して今後継続的に増加していく動画広告市場にさらなる成長を期待して同社の買収を行なったと述べていました。買収後の業績としては3ミニッツの2017年6月期の決算公告は売上高12億8,600万円、当期純損失が3億6500万円。2018年6月期の当期純損失は6億7,700万円となっています。さらに2018年6月期は、グリーの決算上で、3ミニッツ買収ののれん減損が31億5,000万円が特別損失として計上されています。3ミニッツ創業者の宮地氏はアメリカに留学したことをきっかけに起業をしているシリアルアントレプレナーです。

参考・引用:株式会社3ミニッツの株式取得(子会社化)に関するお知らせグリー、女性向け動画メディアやマーケティングを手がける3ミニッツを43億円で買収グリー買収の3ミニッツ、売上12億円も3.6億円の赤字【速報】グリー、18年6月期の営業益は17%増の94億円…「アナザーエデン」「SINoALICE」が再成長、「ダンまち」海外版が貢献

8位 フィスコによるテックビューロ(仮想通貨取引所「Zaif」)買収

8位は2014年6月に創業のテックビューロが運営する仮想通貨取引所「Zaif」のフィスコへの事業譲渡です。テックビューロは2018年10月、譲渡価格55億円+アーンアウト条項付きで買収を行うと発表しています。具体的には、今回のZaif事業譲渡に関して利用者が承諾しなかった分だけその数に応じて金額から控除していくそうです。この利用者承諾期間が延長されたことにより譲渡価格はまだ決定しておらず、来年1月末に譲渡価格が正式に決定されるそうです。9月にZaif上で70億円の仮想通貨がハッキングにより消失したことは記憶に新しいですが、このハッキングでテックビューロは金融庁より3度の業務改善命令が出ていました。今回の事業譲渡を終えた後、テックビューロは仮想通貨交換業の登録を廃止した上で、解散の手続きをするとしています。Zaifが中止していたビットコインとビットコインキャッシュの入出金サービスはフィスコで再開すると述べていますがモナコインについては10月10日、全面的に停止したことを発表しています。テックビューロ創業者の朝山氏は関西学院大学時代に学生起業しておりその後もシリコンバレーで会社を立ち上げるなどしているシリアルアントレプレナーです。

参考・引用/テックビューロ 仮想通貨取引所「Zaif(ザイフ)」をフィスコに売却Zaif、フィスコに事業譲渡 テックビューロは解散へZaifのフィスコ仮想通貨取引所への事業譲渡が完了|テックビューロは仮想通貨交換業の登録廃止へ(開示事項の経過)持分法適用関連会社における 事業の譲受けの効力発生に関するお知らせ

7位 LINEによるFIVE買収

7位は2017年12月、LINE株式会社は2014年10月創業のファイブ株式会社を51.1億円、取得比率100%で買収しました。FIVEは、2014年に動画広告配信プラットフォームをリリースし、運用型広告を展開する「Video Network by FIVE」やブランド広告に特化した「*Moments by FIVE」などのサービスを展開しています。リリース以降、急成長を遂げ、国内の動画広告において最大規模のユーザーリーチ数(アプリMAU:2,800万以上、WEBサイトUU:3,200万以上)を記録しているほか、高品質でプレミアムなモバイルアプリをはじめとする1,800以上のパートナーメディアとの提携を実現し、広告主の数が400を超えるなど、3年間で大きく事業規模を成長、拡大させていました。

今回の買収を通じてLINEは動画広告を専門とするFIVEの技術やリソースを活かし、LINEの広告プラットフォーム事業をさらに強化させていくと発表しています。ファイブは設立して3年あまりでこの大型売却を実現させているという点で大変興味深いディールとなりました。また創業者の菅野氏は新卒でGoogleJapanに就職し経験を積みFIVEを創業しています。

参考・引用/【コーポレート】ファイブ株式会社との資本業務提携による完全子会社化に関するお知らせ

6位 DMMによるBANK買収

6位はDMMによるCASHを運営するバンク株式会社の買収です。2017年2月設立の同社を2017年11月、70億円でDMMがBANKの発行済株式の全てを買取り、買収しました。DMMのBANK買収についてはM&AtoZでも、2017年度編集部が気になったM&A-中小ベンチャー・スタートアップ編-で取り上げましたが、2018年11月7日、BANK社がDMM社からのMBOを発表しています。

MBOに関しては代表取締役の光本氏が5億円で100%買い取ったそうです。また運転資金としてBANK社がDMMより借り入れていた20億円は今後5年間で返済をするそうです。BANK社がMBOに至った背景として光本氏は、今後の各事業のチャレンジを行う上で、よりスピーディーで柔軟な経営判断・動きを行いたいと考えたためと述べています。DMM社の亀山会長は多くを語らない姿勢をとっていますが、この一連の発表は、昨年のBANK買収と同じかそれ以上の衝撃を業界に与えたのではないかと思います。創業者の光本氏は青山学院大卒業後、外資系広告代理店に就職し、後にブラケット社を設立。様々なサービスを開発・売却しており2017年2月バンク社を設立しています。

参考・引用/DMM.comが70億円買収のBANKを1年で「手放した」理由 —— 亀山会長「敗軍の将語らず」

5位 KDDIによるnanapi買収

5位は、KDDIによるnanapiの買収です。2014年10月に77億円のアーンアウトでの買収と報道されています。。2007年12月に創業されたnanapiは、10万以上の生活に役立つテクニックを集めた、日常生活のハウツーメディアを運営している企業です。創業者はツイッターなどでも『けんすう』として有名なシリアルアントレプレナーの起業家、古川健介氏です。古川氏は大学受験浪人時にサービスを開発、大学入学後に起業し、卒業後はリクルートに就職。リクルート在職中にnanapiを創業しています。連結子会社化した経緯については、変化の早いインターネット業界で、通信インフラ・顧客基盤を持つKDDIと、インターネットサービスの開発力やユーザー獲得に強みを持つnanapiが手を組み、新たなメディア、コミュニティサービスを提供することで、大きな規模とスピード感を持つサービスを作る基盤を構築するためとしています。

参考・出展:評価額は約77億円、nanapiがKDDIの子会社となり「けんすう」は次の答えを求めて旅に出るKDDI、ハウツーサイトの「nanapi」を子会社化–買収額は非公開

4位 ヤフーによるdely買収

4位は、ヤフーによるdelyの買収です。2018年7月、93億円にて株式を取得し、既に15.9%であった議決権所有割合を45.6%まで引き上げる形で連結子会社化しました。今回の資本提携によってdelyは、ヤフーが有するメディア・コマース事業等の多様なリソースを活用することが可能になり、delyが持つ独自性や優位性をより強化できるとしています。具体的には、ヤフーのメディア・コマース関連サービス等の利用者がクラシルのコンテンツを利用しやすい取り組みをすすめ、ヤフーのユーザー体験の向上を図るとともにdelyの更なる収益強化の実現を目指すと述べています。また今回の買収では、delyと社長の堀江氏は1株も手放していません。今後はIPO、企業価値1,000億、1兆円を目指す過程でまずは国内No.1になるために、ヤフーと共に歩むことが一番だと考えたと堀江氏自身は述べています。堀江氏は慶應義塾大学在学時にdely社を起業、数度のピボットを経て現在のレシピ動画サービスを2016年2月より始めています。

参考・出展:ヤフー、レシピ動画「クラシル」のdelyを連結子会社化、株式取得総額は約93億円孫正義に想い伝えた26歳、dely創業者の誓い。ヤフー子会社化は「武器だ」

3位 mixiによるチケットキャンプ(フンザ社)買収

3位はmixiによるチケットキャンプ(フンザ社)の買収です。2015年3月、チケットキャンプを運営するフンザを115億円で株式100%取得しました。フンザは2013年創業の当時国内最大級のチケットフリマサービス「チケットキャンプ」を運営していました。コンサートや演劇、スポーツなどの公演チケットをユーザー同士で取り引きできる二次流通プラットフォームで、2014年12月の流通総額は約8億円となっていたそうです。しかし2017年末に同サービスはチケットの高額転売問題やジャニーズの商標権問題により閉鎖しています。チケットキャンプ閉鎖前、mixi買収後のフンザは、2016年6月期の決算公告で当期純損失1億600万円でしたが、1年後の2017年6月期には当期純利益15億7,100万円と驚異的な伸びを見せていました。mixiとしては「モンスト」に次ぐ事業の柱として期待していただけに同社の成長戦略に大きな痛手となりました。創業者の笹森氏は楽天、ZyngaJapanなどでマネージャーを経験した後、フンザを創業したそうです。

参考・出展:ミクシィがチケット二次流通マーケットの「チケットキャンプ」を115億円で買収転売サイト「チケキャン」サービス停止 親会社ミクシィに激震、成長戦略に打撃

 

2位 ポラリスによるBAKE買収

2位はPEファンドのポラリスによるお菓子ブランドのBAKE買収です。2017年7月、150億円(100億円強との報道も)でほぼ100%の株式取得での買収といわれています。このディールに関してはDMMのBANK買収と同様に2017年度編集部が気になったM&A-中小ベンチャー・スタートアップ編-でまとめていますが、ポラリスはBAKEの上場を見据えて買収を行ったそうです。BAKEが手掛けるお菓子ブランドにはシュークリームの「クロッカンシュー ザクザク」やアップルパイの「RINGO」、バターサンドの「PRESS BUTTER SAND」等、どれも流行を創出するスイーツ店として独自の地位を成果業界で築いています。BAKE創業者の長沼氏は慶應義塾大学卒業後、総合商社丸紅に就職、退職後父の経営する「きのとや」で働いたのちにBAKEを創業しています。

参考・出展:チーズタルトなどのBAKE、投資ファンドのポラリスに150億円で売却投資実績(4号ファンド)詳細

1位 KDDIによるソラコム買収

過去5年間のM&Aで最も大きなスタートアップの買収ディールとなったのはKDDIによるIoT通信スタートアップのソラコム買収です。KDDIは株式の過半数を200億円で買収したといわれています。このディールも2017年のものであるため、上記同様、2017年度編集部が気になったM&A-中小ベンチャー・スタートアップ編-の記事で詳細について述べています。KDDIにグループに入ることを決意した理由として、「今後IoT通信プラットフォームをやろうと思うと、5GのIoT向けサービスを、いかに早く市場投入できるかというのが勝負。1つのキャリアと組むのがベストだと判断しました」と述べています。また海外展開に際して海外キャリアとの交渉力を得るという理由もあったといわれています。ソラコムは設立からわずか2年半でイグジットとなっています。KDDIは上記のnanapiの買収などM&Aに積極的に取り組んでいる企業として有名です。2018年10月には子どもが就業体験できる施設「キッザニア」の運営会社を買収しています。創業者の玉川氏は日本IBM基礎研究所、AWSで働いた後、ソラコムを創業しています。また東京大学院、米国カーネギーメロン大学MBAを修了しています。

参考・出展:【続報】主導権をもって世界を獲りに行きたい―、KDDIによる買収をソラコム玉川氏が決めたワケKDDIがキッザニア買収 教育×ITで次の収益

近年は買収価格、件数共に増加傾向

ここまで過去5年の買収価格が大きいディールについて考察してきましたが、1位、2位は昨年の案件、4位、6位は今年の案件であることからも、近年スタートアップのM&Aにおいても大型のものが増えてきていることがわかります。経済状況からも来年度のM&A件数はさらに増加するのではないでしょうか。また弊社サービス「M&Aクラウド」に掲載いただいている企業としては、じげん、ベクトルが、2018年最も積極的にM&Aを行った企業の一つとなっています。じげんは、「三光アド」、「リジョブ」、「アップワールドホールディングス」、「ブレインラボ」、「エリアビジネスマーケティング」を子会社化しており、ベクトルは「あしたのチーム」や「カウモ」、「Jion」といったメディア企業を買収しています。

ライター:豊福ジャン(M&Aクラウドリサーチャー)日本証券アナリスト協会検定会員補

下記リンクより「スタートアップM&A総まとめシート(2013~2018)」がダウンロードできます。

スタートアップM&A総まとめシート(2013~2018)