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国内メディアM&A総まとめ-過去5年の売却価格TOP10-


近年キュレーションメディアをはじめとしたメディア事業を行うスタートアップが増えると同時に、イグジットの手段として活発的にM&Aが行われてきました。今回はスタートアップのメディアM&Aに焦点を当て、売却価格の高い上位10社をその事業内容、買収スキームをまとめていきます。また10位以下のメディア企業も『メディアM&A総まとめシート』として文末に掲載しているので是非ダウンロードしてください。

10位 クルーズによるCandle買収

10位はクルーズによる複数のキュレーション・動画メディアのCandleの買収です。売却価格は12.5億円で取得比率は100%となっています。Candle社は当時東京大学在学中に同社を創業した金 靖征氏が代表取締役 CEO を務め、月間ユニーク訪問者数 1,500 万人以上のファッションキュレーションメディア「MARBLE」などを運営していました。

クルーズ社は元々ゲーム事業を中核事業として成長していましたが、ゲーム事業からコマース事業へと中核事業を写し企業価値向上を目指していました。そのコマース事業の中心に『SHOPLIST.com』を据え、その拡大を目指す上でCandle社を買収したとのことです。また金氏は2019年2月にCandle社の代表取締役を同社取締役の山下主暉氏と交代し、新たにクルーズグループ内における海外への投資や事業に関わっていくということが発表されています。

参考:クルーズグループにおいてメディア事業・新規事業創出を担うCandleの新代表に、取締役・子会社代表を歴任した山下主暉が就任 前代表の金靖征は新たな挑戦として活躍の場を世界へ

クルーズ、ファッションキュレーションメディア「MARBLE」などを運営するCandleを12億5000万円で買収

9位 エボラブルアジアによるまぐまぐ買収

9位はエボラブルアジアによるまぐまぐ買収です。売却価格は約11.5億円で取得比率は約86%となっています。まぐまぐは、メールマガジンやウェブサイトを利用した広告メディアの企画・制作や運用を行っており、メルマガ等のコンテンツの有料課金、メディア広告収入を収益源に事業拡大をしていました。今回の買収ではまぐまぐのもつ広いユーザー基盤へエボラブルアジアのAirTrip(現エアトリ)を訴求していくと述べています。

今回のディールは現金での株式取得と株式交換という方法により行なっています。まずまぐまぐより約66,000株(59.6%)を現金で取得し、まぐまぐ株を取得したSPCであるエヌ・エイチ・シー・フィフティーン社から約26,000株(26.1%)を株式交換により取得し子会社化、合計約94,000株(85.7%)を約11.5億円で取得しています。また、エヌ・エイチ・シー・フィフティーンは、PEファンドのパイオニアあるニューホライズンキャピタルのSPCというのも特徴的なディールです。

参考:子会社化に関するご説明株式の取得及び簡易株式交換による株式会社まぐまぐの子会社化に関するお知らせ

8位 アカツキによるそとあそび買収

8位はアカツキによるアウトドアレジャーの予約サイトを運営するそとあそびの買収です。売却価格は14.1億円で4回に分けて100%の株式を取得すると発表されています。同社の買収に加えてライブエクスペリエンス事業を開始することも発表しています。

人々にワクワク・感動するリアルな体験を提供する事業という位置付けでライブエクスペリエンス事業を行うにあたって、そとあそび社が保有するアウトレジャー事業者との強固な信頼関係とネットワーク、良質な企画・コンテンツ、また良質なコンテンツの提供により有するロイヤリティの高いユーザー基盤を獲得することで、アカツキ社にはない強みを得ることができると述べています。

そとあそび代表の中島氏は海外を含め事業を大きく成長させることができると考えたことから、このタイミングでアカツキ社と事業を作り上げていくことを決めたとのことです。またアカツキ社は2018年12月、プロサッカークラブの東京ヴェルディを関連会社化し、コーポレートパートナー契約の締結を発表しています。同社の今後のライフエクスペリエンス事業の展開にも注視したいです。

参考:株式会社そとあそびの株式取得(子会社化)及びライブエクスペリエンス事業(LX事業)の開始に関するお知らせ

7位 DeNAによるiemo買収

7位は2014年10月のDeNAによるiemo買収です。売却価格は15億円で100%子会社化しています。iemo社はシリアルアントレプレナーの村田マリ氏により創設、わずか9ヶ月でのスピード売却となっていますが、同価格での買収は創業者の村田氏がシリアルアントレプレナーであったこと、買収後メディア事業の責任者としてメディア立ち上げを村田氏が取り組むということが決まり手になったのではないかと考えられます。

またDeNAはゲーム事業に変わる新たな収益の柱をキュレーションメディアによって立てようと考えており、iemoに加えてMERYを同時期に買収しています。現在はWELQショックによりiemo、MERY共にサービスを終了しています。

参考:DeNAがiemoとMERYの2社を計50億円で買収、キュレーション事業に参入DeNAがキュレーションプラットフォーム事業を開始~キュレーションプラットフォーム運営会社2社を買収、リアル巨大産業の構造変革を目指す~

6位 ファンコミュニケーションズによるシーサー買収

6位は2017年7月に行われたファンコミュニケーションズによるシーサー買収です。取得価格は15億円で取得比率は100%です。この買収ディールに関しては、ファンコミ、月間17億PV超のメディアを展開するシーサーを15億円で買収でまとめています。シーサーは「Seesaaブログ」「Seesaa Wiki」「したらば掲示板」など月間17億PVを超える自社メディアをはじめ、スマートフォンアプリや電子書籍サービスなど事業を幅広く展開しています。ファンコミュニケーションのアフィリエイト広告をSeesaaブログに提供していくことを発表しています。

参考:シーサー株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ平成29年12月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

5位 じげんによるリジョブ買収

5位は2014年9月のじげんによるリジョブの買収です。取得比率100%で取得価格は19.8億円です。じげん社の買収理由としては、じげん社の展開しているライフメディアプラットフォーム事業のポートフォリオ拡張としての美容ヘルスケア事業への参入が発表されています。リジョブは美容・ヘルスケア・介護に特化した求人メディアで、2009年に創業され約5年で売却されています。

当時の代表であった創業者の望月氏はじげん社に会社を売却した理由として、次のチャレンジに100%集中するためと述べています。また売却相手にじげん社を選んだ理由については、じげん社の経営陣の魅力や将来の有望性、底力のようなものを感じたためと述べています。また現在望月氏は2015年にXvolve社を設立し「世界的な企業を作る」という目標を掲げ様々なサービスを手がけています。

参考:株式会社リジョブの全株式を取得/美容ヘルスケア領域に参入し、展開領域拡張を加速約20億円でのリジョブ売却から3年。 上場ではなく売却を選んだ理由、次なる野望

4位 じげんによる三光アド買収

4位は2016年12月のじげんによる三光アドの買収です。取得比率100%で取得価格は約31億円です。この規模での買収はじげん社にとって当時最大のものだったそうです。三光アドは東海地方において新聞折込求人広告の企画・制作・発行を手がけており主要な展開地域では市場シェア首位を確立している企業です。じげん社の買収理由としては、じげん社が取り組んでいるインターネット媒体のメディアと三光アドのリアル媒体のクロスセルによってユーザーの利便性やクライアントメディアへの送客力向上を目指すと述べています。

また、買収の原資は株式取得金額全額を新株予約権の行使による調達と借入金によって行うと発表していたことも特徴的です。借入に際しては日銀が運営する「成長基盤強化融資プログラム」を通じ、低利かつ長期での調達を行なったそうです。じげん社はこれまで数々のM&Aを行なっていく中で企業規模を拡大させていっており、2018年6月にはマザーズから東証一部へと市場変更も果たしています。

参考:株式会社三光アドの全株式を取得/じげんとして株式取得額・対象会社売上高過去最大、上場来8社目のM&A

3位 DeNAによるペロリ買収

3位は2014年10月のDeNAによるMERY運営のペロリ買収です。取得比率100%、取得価格は約26.5億円です。MERYは女性向けファッション情報の特化型メディアで女性向けキュレーションメディアとして草分け的な存在として知られいます。また売却直前での月間ユーザーは1,200万人となっていました。

売却当時ファッションコマースの領域へ舵を切ると伝えられていたが、WELQショックに端を発し2016年末MERYは閉鎖しましたが、小学館との合弁という新体制のもと2017年11月再スタートを切っています。現在はライターに一定の指導・教育を行った上でMERY公認ライターとして登録してもらい、テーマなどは自由にライターに任せるというボトムアップの体制をとっています。

参考:総額50億円、ディー・エヌ・エーがiemo、MERY運営2社を子会社化ーー2社に聞く、キュレーションの「次」「MERY」が過去の栄華を取り戻すための課題

2位 GREEによる3ミニッツ買収

2位は2017年2月のGREEによる3ミニッツの買収です。取得比率は100%で取得価格は43億円にアーンアウト条項がついています。この買収に関しては国内スタートアップM&A総まとめ-過去5年の売却価格TOP10-の中で詳しく述べていますので割愛させていただきます。アーンアウト条項の詳細と実際の3ミニッツの買収後の業績などについてまとめています。

参考:国内スタートアップM&A総まとめ-過去5年の売却価格TOP10-

1位 KDDIによるnanapi買収

そしてメディアM&Aの中で最も大きなディールとなったのが、2014年10月のKDDIによるnanapi買収です。この買収に関しても2位同様に国内スタートアップM&A総まとめ-過去5年の売却価格TOP10-の中で紹介しています。つまり過去5年のメディア事業を行うスタートアップ2社は全てのスタートアップのM&Aの中でも売却価格でトップ10に入っているということになります。

nanapiの創業者の古川氏は2019年1月に漫画サービスの「アル」をWeb、アプリで開始しています。Web版ではそれぞれのマンガについてユーザーが自由に好きなコマや好きなところを投稿できるコミュニティ型となっており、アプリ版は買っている漫画の新刊の発売を通知してくれるサービスとなっており、いずれは機能もWebとアプリで統合していくそうです。

参考:国内スタートアップM&A総まとめ-過去5年の売却価格TOP10-マンガサービスの「アル」をリリースいたしました

ライター:豊福ジャン(M&Aクラウドリサーチャー)日本証券アナリスト協会検定会員補

下記リンクよりメディアM&A総まとめシート(2013~2018)をダウンロードできます。

国内メディアM&A総まとめシート(2013~2018)