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業界特化しているからこそ分かる訪問看護M&Aの実情


MTPC 酒詰和幸

一般的な業界のM&A情報だけでは伝わらない、細かい業界それぞれの実情があります。今回は訪問看護ステーションに特化したM&A仲介業を行っているMTPCの酒詰代表に、訪問看護業界のM&A実情について話をしていただきました。

人材採用支援とM&A仲介

前川

現在行っている事業について簡単にご説明ください。

酒詰

医療・介護業界の採用支援と訪問看護ステーションに特化したM&Aの仲介事業を行っています。高齢化が進むにあたり、国の方針で「病院から地域へ」ご自宅で看護やリハビリすることを拡大するという方針になっています。しかし、現場では看護師さんの採用が追い付いていないのが実情です。これらを解決するための人材採用支援とM&A仲介事業を行っています。

前川

素人な質問で申し訳ないのですが、訪問看護と訪問介護は何が違うんですか?

酒詰

訪問看護のスタッフは専門の資格を持つ看護師なので、訪問介護ではできない医療処置を行うことができます。たとえば、看護師であれば、点滴や胃ろう、傷口の消毒、床ずれの措置、人工呼吸器の管理などが可能です。 訪問介護は介護士さんが訪問し介護をするので、そこまでの医療処置は対応出来ません。

前川

そうなんですね。M&Aの仲介事業はなぜ始められたのですか?

酒詰

元々は人材サービスを行っていました。その中で、訪問看護ステーション業界でどんどん採用をして、売上を上げている会社がある一方、採用ができずに廃業してしまい会社も数多くありました。また、看護師さんは売り手市場なのですぐにやめてしまうことも多い業界なので、看護師さんを採用するためにM&Aを行いたいという相談が来たことが始まりです。

一人当たり100万円くらいの企業価値に

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前川

看護師一人当たりの採用コストはどのくらいなんですか?

酒詰

Webや新聞広告などで募集して採用出来る業界ではないので、多くの事業所では人材紹介会社に依頼しております。その場合年収の20%から30%の採用コストがかかるため、だいたい100万円(年収400万円×25%)くらいになります。

前川

ということは、会社を売却するときの、のれん代として看護師一人当たりに対して100万円(採用コスト分)つくというイメージで合ってますか?

酒詰

その通りです。看護師さんやリハビリスタッフさんがいればいるだけ価値は上がります。

前川

看護師さんの年齢はこのくらいなら、なおさら良いなどはありますか?

酒詰

しいて言うのであれば、40代といわれています。訪問看護は基本的に一人で訪問するので、年齢が若く、経験が浅いと何も対応ができないなどが出てくる可能性があります。

また、50代以上になると体力的に厳しいという問題がありますので、40代が良いといわれております。ただし、買い手が研修などの教育をしっかり行える会社であれば新卒など若い人材でも採用することはたくさんあります。

廃業している会社の50%は売却可能だった?

前川

訪問看護ステーション業界では買い手ニーズと売り手ニーズのどちらが高いですか?

酒詰

感覚的には8対2くらいで買い手ニーズが圧倒的に多いと感じています。

前川

廃業する会社はどのような会社ですか?

酒詰

訪問看護ステーション業界ではおおよそ3件を立ち上げて、1件廃業する割合になっていますので廃業の件数はかなり多いです。理由としては赤字経営での廃業だけではなく、看護師さんが退職してしまい廃業に追い込まれてしまうという事が多いです。

前川

看護師さんが退職するとなぜ廃業に追い込まれてしまうんですか?

酒詰

訪問看護には常勤換算2.5名以上(労働時間数に換算した人数)というルールがあります、そのため看護師さんをギリギリの人数で運営していると一人が退職してしまうと廃業に追い込まれてしまいます。

前川

廃業してしまった会社はM&Aで会社売却は不可能だったということですか?

酒詰

そんなことはありません。先ほど説明した通り、買い手のニーズは看護師さんの採用、介護業界への参入、スピードです。なので、赤字経営だとしても買い手のニーズはありますし、常勤換算2.5名を下回ったとしても看護師さんが2名残っているのであれば、買い手のニーズはあります。

前川

感覚的に廃業された会社の中でどのくらいが売却可能だったと思いますか?

酒詰

売却希望額に条件がないのであれば、50%以上で売却が可能だったと思います。実際にあったケースですが、赤字経営で看護師さんの退職がきまっており、常勤換算2.5名が下回る訪問看護ステーションに対して買い手候補が3社ついたケースがあります。売却額としては数百万円と少ない額ではありましたが、廃業してしまうくらいなら会社売却の選択肢も検討する方がいいのではと感じております。

前川

例えば僕が訪問看護ステーションを経営していたとして、場所は五反田、看護師が3人、営業利益はまったく出ていないくらいの規模感だとどれくらいの値段が付きそうですか?

酒詰

一概には言えませんが、1000万円いかないくらいだと思います。

訪問看護特有のM&Aで準備しなければならないもの

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前川

売却を検討した場合、今業界特有の準備しなければならないものなどはありますか?

酒詰

基本的なものは一般的な業界と同じですが、特有なものは給料一覧や賞与一覧、有給休暇の取得台帳などの準備が必要です。看護師さんが退職してしまうと買収の意味がなくなってしまうので、基本的には給料はそのままかベースアップをするのが一般的です。なので、買い手側はそのような資料を準備してほしいといっています。

売却を考えている経営者に一言

前川

売却を検討している経営者に必ずアドバイスしていることはありますか?

酒詰

看護師さんをやめさせないことはもちろん、事業スピードを落とさないようにしてくださいとアドバイスしています。事業売却を検討したとたんに自分の中でゴールが見えたせいなのか、利用者獲得などの事業スピードが落ちてしまう方が少なからずいます。利用者獲得数などの数字に出てしまうものは常に右肩上がりにしていないと、買い手さんが不安に思うことがあるので、そこはしっかりとアドバイスしています。

前川

最後になりますが、会社売却を考えている経営者に一言よろしくお願いいたします。
酒詰

訪問看護ビジネスは魅力的に見えるビジネスだと思って、多くの方が参入されている業界ですが、看護師さんのマネジメントやケアマネさんとのコミュニケーションが医療介護業界特有で少し違った部分があって、苦労されることも多いとは思いますので、早い段階でご相談下させれば適切な買い手さんをご紹介できますので、宜しくお願い致します。

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酒詰和幸

MTPC

代表新卒で業界大手の医療機器総合卸売販売業(東証一部上場グループ)に入社。営業にて従事後、医療系人材サービス業のベンチャー企業に転職。営業・コンサルタント・経営企画室を歴任しメディカル事業部の責任者として従事。 2013年MTPC設立し、コンサルタント業を開始。2014年には訪問看護ステーションに特化したM&A支援を開始。動物病院の経営コンサルティングや老人ホームの営業支援も行う。 都内で訪問看護ステーションを運営する企業の関連会社にて取締役も兼任している。

前川拓也

株式会社M&Aクラウド 代表取締役CEO

大学時代に建設会社を運営していた父から「会社を継いでほしい」と相談されたが、承継しなかったことで会社は廃業になってしまった。その後、新卒でホクレンの業協同組合連合会に入会、てん菜事業本部の管理部門として100億円規模の収支計画を策定。また、農家をはじめ農業を取り巻く数多くの経営者との交渉を行ってきた。ホクレン退会後、28歳で農家と飲食店をつなぐeコマースサービスmoremoreを立ち上げる。自分が初めて経営をする立場になって、父の会社を承継しなかったことに後悔の念に駆られる。moremoreのバイアウト後、201512月に株式会社M&Aクラウドを設立し、代表取締役CEOに就任。M&Aの情報格差の壁を壊し、M&Aをもっと身近なものにすることで事業承継問題の解決に取り組んでいる。