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大企業の経営者からM&Aアドバイザーへ。飲食店M&Aのノウハウを伝授


フォーナレッジ 加藤綱義

いなよしキャピタルパートナーズ(現、NOVAホールディングス)株式会社の代表取締役からM&Aアドバイザーとして独立された、株式会社フォーナレッジの加藤社長に飲食店のM&Aを業者目線だけでなく、買い手目線も織り交ぜながら、話していただきました。

他とは一線を画す、事業会社出身のM&Aアドバイザー

前川

現在行っている事業について、他とどのように違うのかも含め説明よろしくお願いします。

加藤

銀行や証券、アナリストなどの金融系出身の方がM&A業者として独立されることが多いですが、私は事業会社のキャリアからM&A業務を始めました。もともとM&Aを買い側の担当役員として30件以上やってきた経験を生かして、売主又は買主にアドバイスできることが私の強みだと考えています。

また、大抵の業者の方はM&Aが盛んな関東に集中しているが、弊社は名古屋を拠点として関西(大阪支店)と関東(東京支店)をカバーしているので、名古屋のネットワークに強みを持っています。

前川

事業会社の代表からなぜ、M&Aアドバイザーになろうと思ったんですか?

加藤

私は以前、いなよしキャピタルパートナーズ(現、NOVAホールディングス)株式会社の代表取締役としてM&Aに関わってきました。買い側の仕事をしていく中で、団塊の世代の引退に伴う後継者不在の問題に対してアドバイスできる方があまりにも少ない、またはあまりにも敷居が高いことを感じていました。

自分の経験が中小企業や零細企業の事業承継や後継者不在問題の解決に役立てるのであればお手伝いをしたい、という気持ちからこの仕事を選びました。

飲食店を譲渡する場合は不動産業者に依頼すべき?それともM&A業者?

前川

加藤さんの得意業種や過去の実績をみると飲食店が多いですが、飲食店のM&Aは活発なんですか?それともまだまだ認知度が少ない感じですか?

加藤

飲食店のM&Aは昔から「居ぬき」という形で譲渡が行われてきました。これらはM&A業者ではなく不動産業者がアドバイザーになっていましたが、これも広義で考えればM&Aと言えますし、人とレシピがついてくれば事業譲渡になります。しかし、現状では居ぬき譲渡が多くなっています。

理由は飲食店の譲渡の場合、不動産業者に依頼することがあげられます。居ぬき譲渡で検討している案件でもM&A業者に依頼をすることで、M&A業者の幅広いネットワークで人とレシピ付きで事業譲渡になる可能があります。

また、不動産とM&Aの違いとして秘密情報の取り扱いの違いがあります。不動界の場合は物件を特定しないと買い手が検討しないというのが通例ですが、M&Aの場合は匿名で最低限度の情報だけで買い手が検討して、興味と持つと秘密保持契約書を締結してから情報を開示するという流れです。

つまり、譲渡を検討している飲食店が営業中であったとしても、情報がばれて従業員のモチベーションの低下によって売り上げが下がることがありませんし、大家や取引先からの取引ストップになることもありません。なので、飲食店の譲渡を検討したときは、まずM&A業者に相談することを進ます。

飲食店の売却額の目安

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前川

飲食店の買い手のニーズは何が重要視されているんですか?

加藤

居ぬきで物件だけほしいというニーズもありますが、最近では人が足りていないのでM&Aというニーズが出ています。どこの業界もそうだとは思いますが、人の採用が難しいので、採用コストを考えた時にその店に従業員やアルバイト、パートがどれだけいるのかは重視するポイントになります。

前川

飲食店で人一人につき、+α(のれん代)で値段が付くということはありますか?

加藤

今まで取り扱ってきたケースでそのような値段のつけ方はないが、人がほしくてM&Aをするというのは実際に起こっています。

前川

売却額の目安はどのような計算方法がありますか?

加藤

M&A業界では実質営業利益の3~5倍というのが譲渡対価の目安ですが、飲食店の場合ここ3年くらいで値段が落ち込んでいます。具体的には2~3倍くらいです。ワタミやすき家の問題があったせいでマーケットが飲食業界に悲観的になっているところがある。しかし、例外もあります。今後伸びしろがあり、フランチャイズ展開が可能であれば評価がさらにつく可能性があります。

黒字か赤字かで店舗の売り方を決めよ

前川

飲食店の場合、一店舗だけの売却は難しいと聞いたことがありますが、どうなんでしょうか?

加藤

それはおそらくM&A業者側の都合だと思います。複数店舗の時と比べて一店舗の譲渡で得られる仲介手数料が少ないので、最低手数料が高い又は割に合わないと考える業者はやりたがらないと思います。しかし、不動産業者は居ぬき物件を一店舗からやっているのだから、M&A業者が適切な価格であればできないはずはありません。

前川

買い手のニーズとして一店舗からでも買いたいというのはあるんですか?

加藤

一店舗からでもいいという買い手ニーズは大いにあります。

前川

売れる店舗と売れない店舗の違いはありますか?

加藤

原則としては営業利益が出ているか出ていないかになります。黒字であれば事業譲渡を検討すればいいですし、赤字であれば居ぬき譲渡を検討する形でいいと思います。

ファンドに売却するのも一つの選択肢

フォーナレッジ

前川

会社売却を検討している経営者の飲食店ならではの特徴などありますか?

加藤

飲食店は体力を使う仕事ですので、40代から50代で事業承継を考える人が多いです。また、経営をしていく中で自分は10店舗まで大きくできるけどそれ以上は厳しいというのがわかってくる人が多いです。

なので、そこに近づいたときに誰かにバトンタッチして会社を大きくしてもらいたいと考えている人が多いですね。

前川

ということは大手飲食企業に売却したいと考えている人たちが多いということですか?

加藤

それもありますが、飲食店経営者には上場という言葉にあこがれを持っている人たちが多いです。自分で上場させるとなるとかなり難しいので、ファンドに譲渡して雇われ社長として3~5年経営し、会社を大きくさせてから上場し、ファンドと一緒に会社を売却するというケースが結構あります。

10年前にファンドが飲食店を買収するケースが多くありましたが、現場をわからずに買収してしまったためほとんどうまくいきませんでした。その反省を踏まえ、今はオーナーに残ってもらってファンドがガバナンスなどの管理を行う仕組みが最近流行っています。

資料を揃えるのもアドバイザーの仕事

前川

飲食店の場合、帳簿や契約書などの資料がどこにあるかわからないなどが多いと聞きますが、経営者にこうしてほしいなどはありますか?

加藤

実際に資料が整っていないケースが多いのは事実です。譲渡を検討しているのであれば資料などを整理しているに越したことはありませんが、そこに時間を費やしてしまい本業がおろそかになってしまうのは本末転倒です。資料をそろえるのはアドバイザーの仕事でもあります。経営者は利益を出すことに集中してください。

M&Aは理屈じゃなくロマンだ

前川

今までで一番印象深かったM&Aは何ですか?

加藤

今年やっとクロージングができた案件です。食品関係の金属探知機のメーカーでオーナーが70代でした。もともと、オーナーが脱サラ起業された会社ですが、研究開発に力を入れて技術にかける会社ではありましたが、財務は赤字で債務超過、簿外債務ありという内容でしたが東証一部上場企業に譲渡することができました。

ある方はM&Aは理屈じゃなくロマンだという方もいます。想いに対して頑張っている人には必ず買い手が現れると言ことを実感しました。金融系出身のアドバイザーであれば民事再生や技術だけ切り離して売却するなどの小手先の方法をアドバイスするかもしれませんが、私が事業会社出身だったこともあり、オーナーの想いや技術を最大限くみ取った方法でアドバイスすることができました。

自分の親父の年に近かったということもあり、何としてでもハッピーリタイヤになってもらいたい想いでやってきた二年間でした。ペヤングやマクドナルドの異物混入事件での食品に対する安心安全が追い風を与えてくれたのもありますが、自分にしかできないアドバイスをすることができたと考えています。

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加藤綱義

株式会社フォーナレッジ 代表取締役

愛知県蒲郡市出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。1992年日本電信電話株式会社に入社、主に広報部、営業部門に勤務。2002年に株式会社ジー・コミュニケーションに入社。当時は学習塾約300校、外食約10店のグループ。主に常務取締役としてFC加盟及び物件開発、管理本部、経営企画本部、外食事業本部等を経験。

M&Aではとりあえず吾平や英会話NOVA等の約30件(上場会社4社含む)に関わる。2009年に株式会社焼肉屋さかい(JASDAQ 現ジー・テイスト)代表取締役副社長就任し、2010年にいなよしキャピタルパートナーズ株式会社(現NOVAホールディングス)代表取締役社長を経て、201111月に独立・創業した。独立後も31件のM&Aを成約させている。

前川拓也

株式会社M&Aクラウド 代表取締役CEO

大学時代に建設会社を運営していた父から「会社を継いでほしい」と相談されたが、承継しなかったことで会社は廃業になってしまった。その後、新卒でホクレンの業協同組合連合会に入会、てん菜事業本部の管理部門として100億円規模の収支計画を策定。また、農家をはじめ農業を取り巻く数多くの経営者との交渉を行ってきた。ホクレン退会後、28歳で農家と飲食店をつなぐeコマースサービスmoremoreを立ち上げる。自分が初めて経営をする立場になって、父の会社を承継しなかったことに後悔の念に駆られる。moremoreのバイアウト後、201512月に株式会社M&Aクラウドを設立し、代表取締役CEOに就任。M&Aの情報格差の壁を壊し、M&Aをもっと身近なものにすることで事業承継問題の解決に取り組んでいる。